ダンカン・ジョーズのオーク革命 映画「ウォークラフト」

 豊橋ミケ(以下猫) 小夜ちゃん、これもう終わってるんじゃにゃいの?
 九条小夜子(以下九) 何いってんの。TOHOシネマズ新宿と池袋のシネマ・ロサでまだやってるじゃない。
 何をやっているかというとゲームが原作の映画「ウォークラフト」。
  「D&D」や「ロードス島戦記」みたいにゃハイファンタジーだにゃ。
  RPG的といった方が通りがいいかもね。
 確かに原作であるゲームを知らないとわからない部分は確かにある。でもRPG的ファンタジーに慣れた人ならさっぱりわからないってことはないと思うよ。
 完結していないせいもあって、映画としての完成度は高くはない。ファンタジーに興味が無い人が観たらつまらないと思うかも。じゃあ駄作かというと決してそうではない。
 ストーリーを要約すると異世界から侵攻して来たオーク軍とそれに対抗する人間達の闘争劇。
  要約しちゃうと本当に典型的だにゃ。
  そうなんだよねぇ。でもこの話を人間側の視点だけで描いたらそれこそ凡百のRPG的ファンタジーなんだけど、「ウォークラフト」は違う。人間とオーク、双方の側に主人公といえるキャラクターがいて、それぞれの立場から物語が語られているんだ。だから他のゲームや映画では邪悪な怪物として描かれるオークも価値観の異なる知的種族として描かれ、彼らなりの倫理観が示されている。一方の人間側も正しい人ばかりではなく、世界を滅ぼそうとする悪人がいる。
  紋切り型のモンスターじゃにゃいんだにゃ。
  そういう事。オーク側の主人公がフロストウルフ族のデュロタン。オーク達の故郷は滅びつつあり、彼らは新天地を求めて人間達の世界に来たんだ。気性の荒いオークの中では彼は理知的な人格者。
  その前にオーク達がどうやって異世界に来たかを説明しておくにゃ。
 オーク達の指導者は戦士ではなく魔術師のグルダンにゃんだにゃ。グルダンの魔術は生命を代償に発動するものにゃんだにゃ。人間の世界に通じるゲートを開くためにたくさんの知的種族の命が必要にゃんだにゃ。
  侵攻前からグルダンの魔術に疑問を抱き、将来、オークに災いをもたらすのではないかと危惧していたデュロタンはグルダンに反旗を翻し、一対一の決闘に持ち込む。
 決闘は魔術を使ったグルダンが勝った。しかし、その勝ち方はオークにとってはタブーを犯すもの、戦士の誇りを汚す行為だった。
  他の作品じゃ勝つためには手段を選ばにゃいにゃ。
  「ウォークラフト」のオークには彼らなりの倫理があるんだ。
 グルダンはオーク達から卑怯者、決闘を冒涜したと非難されるけど、折悪しく人間達の軍隊が攻めてきて、決闘の事はうやむやになってしまう。
  人間とオークの戦いに決着はつかず、人間達はオークの勢力に対抗するべくエルフやドワーフと同盟を結ぶところで映画は終わるにゃ。
  終りじゃないよ。オークの物語にはまだ続きがあるんだ。
 デュロタンの反乱を知ったグルダンは彼の一族を虐殺する。デュロタンと共に人間の世界に来た彼の妻は殺される直前にまだ赤ん坊の息ゴエルを船の様な器に入れて川に流すんだ。
  それってまるで……。
  モーゼみたいだよね。
 ゴエルが人間の手で育てられる事を示唆するシーンで終わる。
  これで退場ってことはにゃいよにゃ。
  製作者は続きを作りたくてうずうずしてるみたいだね。ゴエルがどちらの側につくのか、あるいは同盟とオークの仲裁者になるのか、モーゼがユダヤ人をエジプトから脱出させたようにオークをさらに異なる世界に導くのか。いずれにせよ続編があるなら彼が主役になるかもしれないね。
  オークが主役ってかにゃり珍しいにゃ。
  ファンタジーにとっては画期的な事だよ。
  初めてかもしれにゃいにゃ。
  いや、20年以上前の1988年に山本弘が「モンスターの逆襲」ってゲームブックで同様の試みをしている。山本弘はその後もモンスターを倒されるだけの怪物ではなく、独特の思考や文化を持つ生物として描いている。彼が「ウォークラフト」を観たら絶賛するんじゃないかな。

 ずいぶん大胆な構想だなぁって思ってスタッフを調べてみて納得したよ。監督がダンカン・ジョーンズなんだ。
  誰それ?
  まだ「ウォークラフト」で三作目の若手監督だけど、デビュー作の「月に囚われた男」で企業に使い捨てられるクローンの悲哀を描き、「ミッション:8ミニッツ」では並行世界の他人に死ぬ直前の8分間だけ憑依、それを何度もくり返してテロを防ぐというループものの傑作を撮って映画通やSFファンから一目置かれている監督なんだ。RPG的ファンタジーである「ウォークラフト」を監督したのは正直、意外だけどSFやファンタジー要素が皆無な作品を撮るよりは納得できる。
  へー。
  ゲームの事は全く知らないけどウチはダンカン・ジョーンズ監督が続投するなら続きが観たいな。
 ちなみに「ウォークラフト」のエルフって何故か目が光ってるんだ。
  日本人にとってはかなり違和感のある姿だにゃ。
  ウチも同感だけど、それはそれでいいじゃない。そもそもオークはトールキンの創作だし、エルフにしたって伝承とはだいぶイメージが違う。「指輪物語」が今のエルフ像を確立したと思ってる人が多いけど、「指輪物語」のエルフが体力も人間を上回っていて、今、ウチらがイメージする優雅だがきゃしゃな種族なんかじゃないんだ。それに「ロード・オブ・リング」を観ればわかる通り昔のエルフの耳は笹の葉の様な細長い形じゃなかった。あれって実は日本発祥で、「ロードス島戦記」のディードリッドから始まったものなんだよ。
 ファンタジーの世界の住人達にとっては変わっていくのは珍しい事じゃない。こうでなくてならないって決めつけるよりも変化を受け入れる方が幅が広がるんだから喜ぶべきことなんだ。
  「ウォークラフト」のオーク像が浸透するかどうかはまだわからにゃいけどにゃ。
  可能性を開いたのは確か。やはりダンカン・ジョーンズは才人だね。


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20世紀の魔女狩り 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

 九条小夜子(以下九) いやー、いい映画だった。気が早いけど今年のベスト1かもしれないね!
 豊橋ミケ(以下猫) それって7月22日、つまり明日公開の映画だにゃ。
  ……うん。
  いつ観たのかにゃあ?
  ……し、7月15日。
  また遅れたにゃあ。
  しょーがないじゃない! ウチも早くしょうと思ってたんだけど、冷蔵庫が壊れたりとかいろいろあったのよ! ミケだって知ってるでしょ!
  はいはい、逆切れしにゃい。さて今回は「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」の話だにゃ。
  その前にどこで観たかしりたくない?
  どこでってあたしも一緒に観たにゃ。
  もー、ミケったらぁ。そういう時は「どこにゃの?」って訊かなくちゃ。そういってくれればスムーズにJCOMのおうちで試写会の話につなげられるでしょ?
  ……あ~そうだったにゃ~、ごめんごめん(棒読み)。
  実はうちらJCOMに加入してるんだよね。で、1、2年くらい前からJCOMオンデマンドで試写会として上映前の映画を抽選で配信するようになったのよ。興味がなかったわけじゃないんだけど今までは観たいと思う映画が無くてね。「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」で初めて応募してみたの。
 最初に驚いたのは応募してすぐに当選したかどうかがわかる事。
  そうそう。リモコンを押したらすぐに当選しましたって画面が出たもんにゃ。
  当選告知に関してはオンデマンドにもJCOMマガジンにも何の説明がなかったからさ、ウチはネットや雑誌の試写会と同じように後でハガキかメールかで通知が届いて、それにパスワードとかシリアルコードとかが書いてあるものと思ってたのよ。
  根拠は?
  ……今までの経験。ウチらオンデマンドとかネット配信とか利用しないからよくわからないんだけど、皆こうなの?
  それ以前にJCOM以外で試写会やってるのかにゃ?
  それに答えられないくらい無知なのよ、ウチら。
 おうちで試写会を観られるのは「トランボ」の場合、7月14~16日の間だけ。で、ウチは15日に観たんだよね。それでブログで取り上げたい、でもその前に今度はメモを取りながらもう一回観られたら……と思って、駄目で元々と思って16日にリモコンのボタンを押したら観られたのよ。
  これは意外だったにゃあ。
  観ようとしてボタンを押したウチがいうのもなんだけどこれっていいのかな?
  何が?
  だってさ、このシステムだと3日間観放題ってことだよね?
  回数制限があるようには見えにゃかったにゃ。
  それって配給会社や映画館にはいい事なのかな?
  あ、何とにゃくわかったきたにゃ。
  普通の試写会は1枚の試写状で当選者の他1名、つまり計2名まで観られる。ところがJCOMのおうちで試写会は何人でも観られる。それも3日間だけとはいえ何度もね。映画館にとっては客を取られてるのと同じじゃないの?
 金をとって第三者に観せることだってできる。そうなるともう海賊版と変わらないんじゃないの?
  配給会社は問題にゃいって思ってるからおうちで試写会に作品を提供してるんじゃにゃいの?
  まあね。でなければウチらが観られるわけはないんだし。でもいいのかな? って思っちゃうんだよ。
  本題に入るにゃ。


  冒頭、字幕で状況の説明が入る。1930年、ドイツやイタリア、日本など、世界各地でのファシズムの台頭と世界大恐慌を受け、多くのアメリカ人が共産党に入った。第二次世界大戦で米とソ連が共にナチスドイツと戦うようになると入党者の数はさらに増えた。ダルトン・トランボもその一人で、彼が共産党に入ったのは1943年だった。
 しかし、第二次世界大戦が終わって米ソ冷戦が始まると状況は変わり、共産主義者は敵視されるようになる。
 共産主義への恐怖から下院非米活動委員会が発足された。彼らは疑わしき者を議会に呼び出し審問にかけた。しかし答えはイエスかノーかの二択で、一切の弁解を許さなかった。それだけではなく仲間の密告を強要した。
 審問のついてはロバート・デ・ニーロ主演の91年の映画「真実の瞬間」って映画にその様子が描かれている。
 密告に応じなければハリウッドから追放される。それを恐れて密告した結果、今度は密告された人が密告を強要される。
  それじゃきりがにゃいにゃ。
  だからたくさんの人を巻き込む結果になったのよ。
 密告を拒んだ者はハリウッドから追放され、職を失った。最悪の場合、投獄されることもあった。
  20世紀の魔女狩りだにゃ。
  まさにその通り。冷戦下、敵への恐怖から起こった集団ヒステリーだった。ハリウッドは人目を引くから真っ先に標的にされたけど、20世紀の魔女狩りはそれだけに留まらなかった。後にはハリウッドとは関係ない一般人や軍人までが対象にされたんだ。
  小夜ちゃん、一応赤狩りって名前があるんだからそっちを使おうにゃ。
  20世紀の魔女狩りの方が実態を表していると思うんだけどなー。ともかく赤狩りを恐れてハリウッドからヨーロッパに活動の場を移した映画人も多かった。
  入浴中のトランボの姿から映画は始まるにゃ。
  おっさんの入浴シーンから始まる映画なんて後にも先にもこの「トランボ」だけだろうね。
  その手の趣味のお客さんが増えるにゃ。
  イヤなサービスシーンだな!
 ただの入浴じゃない。ダルトン・トランボは風呂に入りながら仕事をする癖があった。これだけで観客に一筋縄ではいかないキャラだって印象づけている。
  トランボの仕事はハリウッドの脚本家だにゃ。
  共産主義者の排除に動いたのは政治家だけじゃなかった。ハリウッドの映画人の中からも積極的に協力する者達がいた。それがアメリカの理想を守る映画同盟で、中心となったのはジョン・ウェイン、ハリウッドの内情や映画評を書き、絶大な影響力を誇るコラムニストのヘッダ・ホッパーだった。
 ジョン・ウェインが密告に応じたエドワード・G・ロビンソンに「つらかっただろう」と声をかけ、仕事をまわすよう手配するのに対し、 ヘッダ・ホッパーは密告だけではまだ足りない、さらなる処罰が必要だと強硬に主張して、ジョン・ウェインと険悪な雰囲気になる。
  ヘッダ・ホッパーって何でそこまでするのかにゃ?
  ヘッダ・ホッパーは元女優で、その頃の屈辱的な体験が彼女を赤狩りに走らせたと示唆するシーンがあるんだよ。
  赤狩りに便乗したんだにゃ。
  そういう事。
 本当に共産主義への危機感から赤狩りに協力したのか疑わしいのは彼女だけじゃない。ジョン・ウェインは戦意高揚映画に出ていながら従軍経験は無くて、その事をトランボに指摘され、カッとなってあわやというシーンがある。
  トランボや彼の仲間達は戦場に行ってたにゃ。
  そうなんだよね。戦場に行かなかった事の後ろめたさが彼を赤狩りに走らせたのかもしれない。
 ハリウッドの名誉のためにいっておくと皆が皆非米活動委員会に協力していたわけじゃなかった。早くから非米活動委員会に反対を表明していた映画人もいたんだ。劇中でもラジオでグレゴリー・ペックが反対運動をしていた事が報じられている。
 やがてトランボやその仲間達にも下院非米活動委員会からの召喚状が届く。密告どころかイエスかノー以外の返答を許さない質問にも答えず、逆に共産党員であるというなら証拠を見せろと迫ったトランボは議会侮辱罪で有罪判決を受ける。最初のうちは控訴すれば勝てると楽観的だったトランボ達だったけど、リベラル派だった判事が相次いで急死。勝ち目がなくなり、やむなく刑務所に入ることになる。
  ちょっと話はそれるけど、刑務所の備品係の黒人の囚人がラジオで密告の様子を聞いて「チクリ野郎はムショじゃ死体だ」って言うシーンが印象的だったにゃ。
  自分は共産主義が大嫌いでトランボにも凄んで見せたのにね。たとえ共産主義にダメージを与える行為なのに許せないって事だね。
 密告って仲間を裏切るってことなんだ。だから先にいったジョン・ウェインも「つらかったろう」って声をかけたんだ。
  黒人の台詞の裏返しだにゃ。
  この男達の言動からは裏切りに対する嫌悪が感じられる。
  男達だけじゃにゃいんじゃにゃい? 劇中に流される映画のシーンにも裏切りに関するものが目立ってたにゃ。
  エドワード・G・ロビンソンの映画を再現したシーンも裏切りに関するシーンだったね。
  一番強く主張しているのは「スパルタカス」だにゃ。
  劇中に引用されたシーンは敗れたスパルタカスを殺せと命じられた黒人剣闘士がそれを拒むシーンだった。
  エドワード・G・ロビンソンが圧力に屈して密告した事を考えるとその引用は意味深だにゃ。
  見ものなのは刑務所を出てからのトランボの巻き返し! 密告を拒んだトランボとその仲間達はハリウッドメジャーからほされてしまった。しかし、トランボはその逆境を自分の才能だけで切り開き、下院非米活動員会の圧力を無効化してしまうんだ。
 これは凄い事だよ。ペンが政治権力に勝った数少ない例、これこそ奇跡といっても過言じゃない。
  でも皆が皆トランボみたいじゃにゃかったんだよにゃ。
  そう。残念だけどね……。トランボが赤狩りに勝った男なら赤狩りに屈した男の代表として描かれたのがエドワード・G・ロビンソンだろうね。彼は大切にしていた絵画を売り払ってまでトランボの裁判を支援していたけど、仕事をほされた末にトランボの名を下院非米活動委員会に言ってしまうんだ、
 そして圧力をはねのけられず消えて行った映画人の代表として描かれているのがトランボの仲間の一人のアーレン・ハードだろうね。


 ウチらは東京都の青少年健全育成法の成立を阻止できなかった。その体験があるからトランボに過剰に肩入れしてるのではないかって気はある。
 ラスト、老境にさしかかったトランボはハリウッドから功労賞を贈られ、その式典で赤狩りの時代を恐怖に踊らされた時代だった言う。今、まさに同じ事が世界の各地で起こっている。エンディングで「共産党員はモスクワのスパイ」と書かれた垂れ幕を掲げる写真や「よい共産党員は死んだ教案党員だけ」と書かれたプラカードを持つ男の写真が流れる。ウチはこの光景にイスラム教徒は全てテロリストとか、メキシコ人は不法労働者とか言うトランプや彼の支持者が重なって見えた。
  あの時代だけに限った話じゃにゃいんだにゃ。
  アメリカだけの話でもない。同時期、日本でもレッドパージといってGHQの指示で共産党員が公務員や民間の企業から追放され、その事実がわかると再就職は難しかった。
  ほされたんだにゃ。
  レッドパージにはNHKも参加していた。
  昔からお上のいいにゃりにゃんだにゃ。
  公営放送というより国営放送って感じだよね。
 第二次世界大戦時、アメリカで生まれた二世、三世を含む日本人を強制収容所に入れたのも対象や理屈が違うだけで赤狩りやイスラム教、移民へのヘイトと同じものだろう。
 共産主義者達は日本人のように裁判無しで隔離されたりはしなかった。それをもって人類は少しは進歩したといえるかもしれない。ではイスラム教徒や移民はどうだろう?
  トランプが当選したらどうにゃるかわからにゃいもんにゃあ。
  グレゴリー・ペックのように赤狩りへの反対を表明した人はいたからね。それでも赤狩りを止められなかった。
 トランボの身に起こった事は将来、誰の身に起きても不思議ではない。今、世界はそんな方向性に向かいつつある。そんな時、敵への過剰反応の恐ろしさとそれに抗った人間の強さを描いたこの映画が作られ、公開される事には大きな意味がある。共産主義がどうのこうのなんて低い次元の話にしちゃいけないよ。
 キング・ブラザース社長を演じたジョン・グッドマンが圧力をかけにきた下院非米活動委員会の人間を追い払うシーンは痛快で、ウチがいうような理屈抜きで観ても充分面白い。正直、あの時代のハリウッドの知識があったらもっと楽しめたかもと思う。
  グレゴリー・ペックを知らない日本人、多いかもにゃ。
  エドワード・G・ロビンソンなんてウチも知らなかったよ。というかダルトン・トランボ自体この映画で知ったんだし。
 くり返すけど難解な思想映画ではない。ハリウッドの内幕ものとして観ても充分楽しめるし、一緒に観た人と話し合ってみれば意外な一面が見えてくるかもしれない。
 ただ、事実を忠実に映画化しているわけじゃない点は要注意。カーク・ダグラスもオットー・プレミンジャーもひょこっと現れたように描かれているけど実際は早い時期からトランボと接触していたんだ。
  大河ドラマと同じと思えばいいにゃ。
  う~ん、確かにその通りなんだけど一緒にしてほしくない気持ちも。
  ところで小夜ちゃん、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」ってタイトル、おかしくにゃい?
  いわれてみればそうだねぇ。映画を観るとむしろ愛されていたような気が……。



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前座かくして真打ち隠さず 「10 クローバーフィールド・レーン」(ネタバレ有り)

 九条小夜子(以下九) この映画、ウチの16年ワースト10に間違いなく入るよ。
 豊橋ミケ(以下猫) えっ、そこまでひどかったかにゃ?
  映画以外があまりにもひどかったのよ!
  ……いってることがよくわからにゃいにゃ。
  この映画はラスト数分以外の殆どが地下のシェルターが舞台なの。
  いわゆる密室劇だにゃ。
  部屋数は多いけどそうなるね。
 ヒロインのミシェルは恋人とケンカ別れして車で出ていく。その最中に事故に遭って気を失ってしまう。気がつくと質素な部屋でマットレスの上に寝かされていた。
  気づくと足が鎖で壁につながれていたにゃ。
  あれじゃ誰だって誘拐監禁された!? って思っちゃうよね。
 やがてハワードという男が現れ、地球は敵の攻撃を受け壊滅状態にある事、それに備えたシェルターに事故に遭ったミシェルを連れてきたと告げる。
  さらに外は有毒ガスで満ちているから出られにゃいとも。
  スマホは圏外でつながらないし、シェルターにはTVもラジオもネットも無い。情報源はハワードただ一人。先に挙げた事もあってミシェルは隙をついてハワードから鍵を奪い、外へ通じる扉を開けようした時、初めてハワードの言葉が真実だったと知る。
 以降、昔からハワードを知る青年エメットと一緒に三人の共同生活が続く。しかし、換気装置の修理の時に見つけた物がきっかけでハワードが嘘をついている事がわかり、再び彼への不信感が高まる。
 ミシェルは手近な物でガスマスクと防毒スーツを自作、脱出を試みるんだけど……。
  脱出に成功するのは観てにゃくてもわかるにゃ。
  そうなんだよねえ。だって予告編でその後の事を流してるんだもん。
  ポスターにゃんかあの宇宙船が載ってるにゃ。
  そうなんだよね。この映画ってさ、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」みたいに○○だと思って観てたら途中から××になった! びっくり!! を狙ったヤツだよね。ペース配分はだいぶ違うけど。
  もっとわかりやすくいうとどんでん返しだにゃ。
  どっちにしたって先に知ってたら効果激減だよ。ウチは予告もポスターも観ていたからシェルター内でのシーン、特に前半が長く感じられた。
  答えわかってるもんにゃあ。
  確かにハワードが極限状況を生き延びたい一心で威圧的になってるだけなのか、それともサイコ親父なのか? それは予告ではわからないけどさぁ。
  ミステリでいえば真犯人やトリックを暴く前に犯人かもと思わせるような行動をした人が何でそんな事をしたのかを説明するようなものかにゃ。
  ジョン・グッドマンには失礼だけど前座だよね。
 想像してみて。予告がシェルター内のシーンだけだったら……。
  外に出てみたら怪物が襲ってくるにゃんて予想しにゃいから驚くにゃ。
  でしょ? タイトルが「10 クローバーフィールド・レーン」だから「クローバーフィールド」を知ってる人はただのサイコ・サスペンスじゃないなと見抜くだろうけど、この映画を作った人達は明らかにミケがいったことを狙っていたのに日本の宣伝担当者が台無しにしちゃったのよ。
 よくさ、予告でいいシーンを全部使っちゃったって話は聞くけど、それはあくまでもインパクトに限った話じゃない。なのに予告でネタバレって前代未聞だよ。
  宣伝が映画をつまらにゃくした珍しい例だにゃ。
  ほんと、ミケのいう通りだよ。
 話を戻すけど、もし違う予告、ポスターだったとしてもベストには入れなかったと思う。
 でもワーストにも入れなかった。
  そうにゃるとブログにも取り上げにゃかったにゃ。
  うーん、確かにそうなるね。
  悪名も名のうちにゃ。全く相手にされにゃいよりは叩かれてでも取り上げてもらった方がいいにゃ。案外日本の宣伝も外れじゃにゃかったかも。
  そりゃ詭弁だよ! やっぱこの宣伝はまずいって。
  話は変わるけど、タイトルの「10 クローバーフィールド・レーン」ってどういう意味にゃの?
  地名だよ。クローバーフィールド・レーン10番地みたいな意味。レーンの意味も字幕いあったけど忘れちゃった。最後の最後で看板が映ってたでしょ。
  あーっ、思い出した! 思い出したにゃ!
  実のところ「クローバーフィールド」とのつながりが明示されてるのってここだけなんだよね。だからウチ、いつも使う前作ってフレーズを使わなかった。
  え、じゃ小夜ちゃんは続編じゃないって思ってるの?
  うん。だって「クローバーフィールド」の後の話なら攻撃を受けたって話、ミシェルにも自然に受け入れられたと思うんだ。それに「クローバーフィールド」のラストに出てきた怪獣と「10 クローバーフィールド・レーン」の怪物って明らかにデザインの方向性が違う。だからウチは関連性は無いと見ている。
  じゃあ何でクローバーフィールドにゃんてタイトルにつけたのかにゃ?
  うーん、わかんない。そもそも「クローバーフィールド」の時は地名じゃなかったからね。
 まぁあんまり深く考えない方がいいと思うよ。ストーリーに関係してるわけじゃないし。
  タイトルロールにゃのに無関係……。
  そうだよ。他の地名にしてもストーリーは変わらないだろうね。マサチューセッツ州アーカムとか東江戸川3丁目とかでも同じだったと思うよ。
  最後のはストーリーは同じでもムードはかにゃり変わりそうだにゃ。




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意外なのはストーリーだけじゃない 「殿、利息でござる!」

 九条小夜子(以下九)豊橋ミケ(以下猫) おはようございます!
  時代劇の話ってこれが初めてじゃにゃいかにゃ?
  そうだね。時代劇、全く観ないってわけじゃないんだけどね。
 「小夜ミケ」初の時代劇、その名は「殿、利息でござる!」
 


  あと数時間で公開だからまだ観てにゃいのでは? って思ってるにゃ?
  実はウチらは4月5日の完成披露試写会で観てるんだよね~。

「殿、利息でござる!」1

  1か月以上放置していたわけだにゃ。
  ……ごめんなさい。
  今月はこんにゃのばっかりだにゃ。
  試写会場は有楽町の丸の内ピカデリー。
  行ったらこれをもらったにゃ。

「殿、利息でござる!」2

  実はこの試写会には舞台挨拶もあってね、ついでにマスコミ向けのフォトセッションや宣伝素材の撮影もやってたんだ。で、この紙を客に配ったのもそのためなんだ。
 舞台挨拶には主演の阿部サダヲの他、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、中本賢、西村雅彦らが集まった。
  きたろうがジョークを飛ばして場をさらってたにゃ。
  さすがシティーボーイズのブレインと言われた男。
  映画にちにゃんで5円玉を集める企画をやってたけど、あれ、どうにゃったんだろう?

 「殿、利息でござる!」3

  何で5円玉かっていうと阿部サダヲ演じる造り酒屋の主人穀田屋十三郎らが集めていたから。
  にゃんで集めていたんだにゃ?
  穀田屋十三郎が住む宿場町はただでさえ客足が遠のいているところに加え、伝馬役といって参勤交代の費用まで負担させられていた。これではやっていけないと篤平治が漏らした一言から殿様に大金を貸して利子を取り、それを伝馬役の費用にあてようと東奔西走する。
 主演は阿部サダヲと聞けば……。
  それはもういったにゃ。
  いやいや、キャスト紹介の話じゃないのよ。阿部サダヲといえば皆エキセントリックな演技を思い浮かべるじゃない。もちろんそれだけの俳優じゃないのはいうまでもないんだけど、意外なことに「殿、利息でござる!」では思い立ったらまっしぐらな性格のキャラを奇をてらわずストレートに演じている。
  そうそう、笑いを誘うようにゃ演技は西村雅彦や瑛太が担っていたにゃ。
  例えば瑛太演じる篤平治が殿様に金を貸して利息を取ろうって言ったのは深く考えずに口にした思いつきだったんだよね。本人は実行する気は無いし、実現できるとも思ってなかった。ところが穀田屋十三郎は真に受けて走り始めちゃった。村をとりしきる肝煎や大肝煎に話を持って行ったのも、彼らに穀田屋十三郎を止めてほしかったからなんだ。でも二人とも穀田屋十三郎同様乗り気で、逆に本格的に動き出すはめになってしまう。
  当てが外れた時の篤平治のリアクションにはくすっとさせられたにゃ。
  他にも西村雅彦演じる遠藤寿内のかっこいい事を言ってるけど実は小心者なキャラは三谷作品を彷彿とさせる。
 この穀田屋十三郎、自分は養子に出され、実家の質屋を弟が継いだ事にコンプレックスを抱いていた。それが原因で金集めから身を引いてしまう。
  これも意外だったにゃ。
  欲をいえばこれ以後、穀田屋十三郎は影を薄めてしまう。
  金集めに復帰するくだりも印象が薄いもんにゃ。
  藩も馬鹿じゃない。金が欲しいからといって毎年利息を払い続けるのは面倒だってわけで、せっかく穀田屋十三郎が集めた銭を「藩は銭を扱わないから金で収めるように」と言う。実はこれ、藩に借金をさせないための策略だった。
  あれには騙されたにゃ。
  金融に疎い人なら思いつきもしないだろうね。敵(?)ながらあっぱれ。
 この窮地を救うのは誰か? 普通なら身を引いた事の償いに穀田屋十三郎が奮闘して何とか丸く収めるところなんだろうけど、そこが実話の難しさ。
  穀田屋十三郎は何もしにゃいにゃ。
  藩から出された難題をクリアするのは弟の浅野屋陣内なんだよね。
 これって作劇上はマイナスだと思う。このエピソードを通じて実家と和解するんだけど、それって金集めには関係の無い話。
  主人公にゃのに何もしにゃいから、それでいいの? って思っちゃうにゃ。
  事実とは違っても難題解決に穀田屋十三郎も一緒に動くようにすればすっきり楽しめたと思う。
 首をひねるところが無いではないけど、「殿、利息でござる!」が意欲的な映画なのは間違いない。
時代劇ってさ、ほとんど武士の話じゃない?
  「さくらん」みたいにゃ映画もあるから「殿、利息でござる!」が初めてってわけじゃにゃいにゃ。
  そりゃそうなんだけどさ、それでもレアケースだって事は変わらない。
 武士の話が悪いってわけじゃないよ。でも実際の江戸時代で一番多かったのは農民で、それに比べれば武士は一握りといってもよかった。
 現代を舞台にした映画のほとんどが銀行の本社勤務や国家公務員の話だったらどう思う? 凄く不自然だよね。
 現代にはいろんな職業がある。お話を作りづらい職業も当然あるけど、どの職業にも克服すべき課題やそれに携わる人の悩みがある。それは江戸時代だって同じはずで、武士以外の物語もあるはずなんだ。なのに武士の話ばっかりっていうのは作り手の怠慢だし、それに疑問を抱かなかったウチら受け手も同じように怠慢だった思う。
 「殿、利息でござる!」はその事に気づかせてくれた。これは意外だったし、映画として凄い事だと思うんだ。
  もちろん珍しいだけの映画じゃにゃいにゃ。
  俳優たちのユーモラスな演技を愉しむだけでも観に行く価値はあるよ!
  お勧めだにゃ。


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軍用ドローンがもたらす矛盾した気持ち 「ドローン・オブ・ウォー」

 豊橋ミケ(以下猫) 見て見て、小夜ちゃん。広告が出てるにゃ。
 九条小夜子(以下九) 残念だなー、広告が出ないの唯一の取柄だったのに……。
  それ、自虐しすぎにゃ……。
  それも今日で終り! 24日に池袋の文芸坐「ドローン・オブ・ウォー」って映画を観たんだよね。
 
  これ、去年の秋頃に公開された映画だにゃ。
  そうそう。TOHOシネマズでやるって聞いたんで、観に行こうって思って上映時間を調べたらもう終わってた。
  上映期間、短かかったみたいだにゃ。
  TOHOシネマズとはいえ東京じゃ新宿と六本木のみ。ミニシアター並の小規模公開だったみたい。
  小夜ちゃん、「プリディスティネーション」の時もそんにゃ事いってにゃかったっけ?
  うん、あれも観に行こうと思ったらもう終わってて、文芸坐での上映で観たんだ。
  そっちにもイーサン・ホークが出てたにゃ。
  出てるも何も主役だよ。イーサン・ホークとは縁が無いってわけじゃないんだけどなぁ。
  小夜ちゃんと縁が無いといえば「競輪上人行状記」だにゃ。
  文芸坐で何度も上映してるのに都合が合わなかったり、急用ができたりで観に行けないんだよね。これって運命?
  いいかげんDVD借りるか買うかするにゃ。
  そこまでして観たくはない。
 「プリディスティネーション」と一緒に観た「ランダム 存在の確率」はSFマインドに溢れた隠れた名作だったね。

 ミラー彗星が飛来する夜、8名の男女がホームパーティのために集まる。停電が起きて、様子を見に外へ出ると一件だけあかりのついた家があった。その家は8人がホームパーティをやっている家にそっくりだった。
 似てるのは家だけじゃなかった。その家にいる人間達もそっくりだった。
  でも微妙な違いがあるんだにゃ。
  そう、それがこの映画のキモなんだよね。
 やがて彗星の影響で並行世界とつながってしまったのではないか、あの家とその住人達は別世界の自分達なのではないかって説が出てくる。
  はっきりとした証拠を出さないのがうまいにゃ。
  ここでミケがいった微妙な違いが活きてくる。
  停電の混乱で別世界の人間が紛れ込んでくるんだけど、周りの人間どころか当の本人も気づいていにゃいんだよにゃ。
  異世界に行った事に気づかないってのは相当珍しい。やがて目の前にいる人間は本当に自分の知っているあの人なのかという疑問だけでなく、今いる世界は自分の知っている世界なのかという疑問まで生じてしまう。
 発端となるアイデア自体はSF業界では珍しいものではないけど、それを哲学的な物語に発展させているのは凄い。
 一般受けしないのは仕方ないとはいえもっと知られてしい名作SF映画だよ。

  小夜ちゃん、今回は「ドローン・オブ・ウォー」の話だにゃ。
  あっ、そうだった。
 この映画、タイトル通り軍用ドローンによる戦争をイーサン・ホーク演じるイーガン少佐を通して描いたもの。
  面白かった?
  正直にいうとつまんない。短期間で上映終了なのも納得の内容だった。
 だってイーガン少佐って屋内で座って計器をいじってるだけなんだもん。これじゃあ盛り上がるはずがないよ。
  えーっ、じゃ何でブログで取り上げるんだにゃ?
  面白くはないけど駄作ではない。考えさせられるところがたくさんあったからよ。

 イーガン少佐の任務は上からの指示通りにドローンを操縦し、ミサイルを撃ってアフガニスタンに潜むイスラム原理主義テロリストを“排除”すること。
 ドローンの操縦は衛星回線を通じてラスベガス近くの空軍基地から行う。
  それにゃら反撃される心配はにゃいにゃ。
  安全だと思う? 確かに身体は無事だけど心はそうはいかない。
 例えば標的の近くを偶然民間人が通りかかる。このままでは民間人も危ないけどミサイルはもう発射した後で、途中で爆破させることもできない。結局民間人はミサイルの爆発に巻き込まれて死んでしまった。
 またある時は歩兵達から見張りを頼まれる。
  そんにゃ事もするのか。
  そのためにドローンを飛ばしたわけじゃなくて、たまたま上空を飛んでいたら頼まれたんだけどね。
 敵の姿は無く、このまま何事もなく終わると思った瞬間、彼らは地雷を踏んでしまう。あ、字幕では地雷ではなく、速成爆弾っていってた。
 遠く離れた場所のイーガン達にはアフガンの米軍司令部に連絡する以外何もできない。結局イーガン達が見ている前で歩兵達は皆死んでしまった。
 死の恐怖からは逃れられたけど良心の呵責は変わらないし、安全になったが故の負い目を背負うことになった。
 かつてF-16に乗っていたイーガン少佐はもう一度空を飛びたいと願う。でもドローンの活躍で戦闘機パイロットの出番はどんどんなくなっている。実際、イーガン少佐の部隊でパイロットだったのは彼一人なんだ。
 こうした出来事が積み重なり、イーガン少佐は鬱憤をため込んでいく。それは彼の家庭に亀裂を作ってしまった。
  差し引きゼロだにゃ。
  だからってドローンを放棄して戦場に生身の人間を送るのがいいとはいえない。アメリカ空軍だけとはいえ死傷者が減るのは否定できないからね。
  でもそれって卑怯にゃんじゃ……。
  悪いけど正々堂々と戦ったっていうのは自己満足だよ。正々堂々と戦ってたくさんの戦死者を出す指導者と卑怯でも戦死者を低く抑えた指導者。どっちがいいと思う? それに生身の人間を戦場に送ったとしても民間人を巻き込む事は変わらない。それどころかドローンによる攻撃は第二次世界大戦やベトナム戦争で行った爆撃と比べれば民間人の死者は少ないんだ。もっともこれはドローンというよりは電子機器や爆弾の進歩によるものだけど。技術の発展によっては今よりももっと低くできるかもしれない。
  小夜ちゃんはドローンに賛成にゃの?
  YESかNOかはっきりしろといわれると正直苦しい。というより抵抗がある。ドローンに利点がある事は認めるけど、その登場を歓迎する気にはなれないんだ。
 でもドローンが嫌だからってパイロットに撃墜されて死ぬリスクを負えとはいえない。
  歯切れが悪いにゃあ。
  強いていえば消極的賛成かな。
 ドローンの操縦はコースから攻撃のタイミングまでCIAや上官の指示に従って行う。その姿はパイロットというよりはオペレーターと呼ぶ方が相応しい。
  かつてはパイロットだったイーガンには苦痛だろうにゃあ。
  もっとも生身の兵士だって似たようなもんじゃない? イーガン少佐だって自分で決めたコースじゃなく、上から指示されたコースを飛んでいたんだろうし。
 そんな憂さを晴らすかのようにラスト、イーガン少佐は独断でアジトの世話をしている女性をレイプをくり返していたテロリストを攻撃する。そこで映画は終わるけど、何らかの処分は免れないだろうね。
  何でそんにゃ事したのかにゃあ?
  作戦行動中のイーガン少佐達は自分で判断する事は許されず、ドローンというシステムの一部になっていた。イーガン少佐はそれに反発したんじゃないかな。
 でも軍隊って元々そういうものじゃない? キューブリックの「フルメタルジャケット」の前半は鬼軍曹に罵倒されながらの訓練だった。軍隊は命令には絶対服従でないといけない。その事を骨身にしみてわからせるには強い我や個性は邪魔になる。だから最初の段階でそれをつぶしておくんだ。
  へ?
  究極の軍隊ってさ、ドローンだけで構成されたものなんじゃない? つまり兵士一人一人の考えなんてものは邪魔なんだよ。
  何も考えずただ上の命令に従っていればいいって事?
  それが理想の兵隊じゃないの?

 「ドローン・オブ・ウォー」を観て思ったのは結局何も変わらないって事なんだ。少なくとも民間人にとってはね。
  まきぞえで殺されるアフガンの民間人にとっては人間であろうとドローンであろうと関係にゃいもんにゃあ。
  アフガンの人達に限った話じゃないよ。ドローンでも兵士の心は傷つく。その影響は兵士の家族に及ぶんだ。
  それってドローンが出てくる前からある話だにゃ。
  でしょ? 観る前はもっと明確な違いがあるか、今はよくても将来とんでもない問題を起こす。それが明示か暗示、いずれかの形で示されるものと期待していたんだ。
  違ったにゃ。
  うん。ドローンは死傷者の数を減らす。否定するようで抵抗があるけど、それって程度の問題に過ぎないんじゃないかって思う。
  程度? 安全確保のためにどんだけの人が苦労してると思ってるんだにゃ?
  だからドローンを無駄とかいうつもりはないんだよ。自動化の波は軍隊であろうと避けて通れない。
 ドローンの軍事利用ってさ、ウチらが日頃意識しない軍隊の本質を浮き彫りにしたんじゃないかって思う。
  軍隊ではドローンも生身の兵士も同じ歯車に過ぎないってヤツ?
  そう。
  「ドローン・オブ・ウォー」はドローンに関わる人達の日常を通じて軍隊の本質を教えてくれたんだにゃあ。
  うん。でもつまんないけどね。
  そのまとめ方はにゃいだろ!!


テーマ : 映画
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tag : 文芸坐 「ドローン・オブ・ウォー」 ドローン 軍隊

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