スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

リアルだけどリアルじゃない 「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」

 九条小夜子(以下九)豊橋ミケ(以下猫) 新年明けましておめでとうございます。
 旧年中は当ブログを閲覧していただき誠に有難うございました。本年もよろしくお願いいたします。
  さて、ベスト&ワーストの話なんだけど……。
  おいおい! 一昨日やったばかりだにゃ!
  もちろん今2017年のベスト&ワーストを決めようっていうんじゃないよ。今回のお題の映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」を去年観ていたらベストの内容が変わっていたんじゃないかって思ってさ。
  そんにゃによかったの?
  うん。ウチは2016年には間に合わなかったけど、映画誌のベスト10には入るんじゃないかな。
 昨年紹介した「ドローン・オブ・ウォー」と同じくドローンを扱った映画なんだよね。
 「ドローン・オブ・ウォー」がドローンの操縦士の視点で進むのに対し、「アイ・イン。ザ・スカイ」はドローンに指示を出す軍上層部を中心にした群像劇になっている。
 「ドローン・オブ・ウォー」では一エピソードに過ぎなかった民間人がまきぞえになるケースだけで一本の映画にしてしまった点も好対照だね。
 米英が共同でケニアのある地域にイスラム過激派のアジトに大物が潜伏している事を突き止める。最初は捕獲作戦だったんだけどそこは武装勢力が支配している場所で、部隊を送り込む事は不可能。さらに潜伏先には自爆テロに使う爆弾とその志願者もいた。
  何とかしにゃいと大変だにゃ。
  そう、放っておけば多数の死者が出るかもしれない。そこで当初は空からの情報収集に使っていたドローンで空爆しようとするんだけど、折悪しくアジトの前で少女がパンを売り始めちゃう。
  空爆って事は……。
  うん、少女がまきぞえになる可能性が高い。だから少女一人を救って自爆テロを許すか、一人の少女を犠牲にしてでも自爆テロを防ぐかで上層部は議論になる。人道的な問題だけじゃない。武装勢力は少女の死を利用して米英の非道さをアピールする事も考えられる。その逆もありえる。
  その逆?
  米英が自爆テロの死者を利用して武装勢力に対する攻撃を正当化するのよ。いかに相手のイメージをダウンさせるかって事も入ってくるの。
 結局、彼らだけでは結論を出せず、イギリスの外務相やアメリカの国務長官らの判断を仰ぐの。
  にゃんか「シン・ゴジラ」みたいだにゃ。
  前半が保身や法律に縛られ迅速な行動ができない日本の縦割り行政を風刺しているって話題になったけど実はイギリスもそんなに変わらないみたい(笑)。むしろ少女が犠牲になるかもと言われても躊躇せず攻撃を支持するアメリカの方が怖い。
 少女を助けるべく現地の協力者にパンを買い占めさせるなど手は尽くすものの失敗に終ってしまう。さらにアジト内に潜り込ませていたカナブン型ドローンのバッテリーが切れて中の様子がわからなくなってしまう。
  カナブン型ドローン?
  本当に出てくるのよ。カナブンそっくりの外見でカメラが仕込んであって、虫と同じく羽根ではばたいて飛ぶの。携帯ゲーム機の改造か、それを模したコントローラーで操縦するんだ。他にもハチドリ型のドローンも出てたよ。
  ……それ本当にあるの?
  正直、ウチも本当かなぁって思う。でもまぁ仮に嘘だとしても映画の価値を下げるわけじゃない。
  スパイ映画にゃんか「ねえよ、それ、絶対!」ってアイテムが出てくるもんにゃ。
  荒唐無稽なスパイアクションと「アイ・イン・ザ・スカイ」を同列に並べるのもどうかと思うけどミケのいいたい事はわかる。
 着弾地点をずらし、少女が爆発に巻き込まれる確率を45%にまで抑え、ついに空爆実行!
  それから?
  続きはウェブで!
  いや、これがウェブだから。
  さすがにウチがここから先をいっちゃまずいでしょ。一応上の方にネタバレありって書いてあるとしてもさ。
ウチの紹介だと小難しい政治劇みたいに感じられるかもしれないけど実際はスパイ映画みたいなシチュエーションが多くてサスペンスとしても楽しめるんだ。
  「ドローン・オブ・ウォー」よりはかなりエンタメ色が強いんだにゃ。
  そういう事。
 ラスト、武装勢力の男達はある事をするためにジープから機関銃を外す。米英の軍人達がした事と好対照になっていて興味深かった。また英軍の将軍の一人が孫に贈るおもちゃを買うエピソードが冒頭とラストに挿入されていて、これまた強く印象に残った。
  小夜ちゃんの話をきいていると「ドローン・オブ・ザ・ウォー」と作劇こそ違うけどドローンの活躍する現代の戦場をリアルに切り取っているにゃ。でもドローンの是非にまでは踏み込んでいにゃいように見えるにゃ。
  そう、その通り。ドローンの是非という点では「アイ・イン・ザ・スカイ」はもはや当たり前のものになっている感があって、「ドローン・オブ・ウォー」の方が踏み込んでいるように感じられた。あの時にもいったけど自動化の流れはもう止めようがないし、そもそもドローンが無ければ自爆テロはおろか過激派幹部がいる事も特定できなかった。当然自爆テロは阻止できないわけで、その場合は多くの死者が出ていたはず。ウチのドローンに対する考えは「ドローン・オブ・ウォー」の時と変わってない。
  確かに地上部隊じゃアジトに近づく前に逃げられちゃうだろうにゃあ。
  「アイ・イン・ザ・スカイ」はドローンによる戦争を描いているけどそれ以上でも以下でもない。映画の面白さでは「アイ・イン・ザ・スカイ」の方が上だと思うけど、ドローン戦争の現実って点じゃ「ドローン・オブ・ウォー」の方が上かもしれない。
  え、何で?
  だってさ、過去に報道されたドローンによる誤爆の記事を思い出してみてよ。とても民間人をまきこむことをためらっているようには見えないでしょ?
  ちょっと怖いにゃ。
  ちょっとどころじゃないよ。組織からの支援や支持を受けていないホームグロウンのテロリストがいる事を考えると「アイ・イン・ザ・スカイ」は遠い国の話とは限らないかもしれないよ。
  ち、地上部隊があるにゃ……。


テーマ : 洋画
ジャンル : 映画

tag : ドローン アイ・イン・ザ・スカイ 戦争 テロ イスラム過激派

怪獣よりも危険な「シン・ゴジラ」!? 2016年のベスト&ワースト

 九条小夜子(以下九) 今年も残すところわずかとなりました。
 豊橋ミケ(以下猫) もうわずかっていうレベルじゃにゃいにゃ! あと数分で2017年にゃ!
  それでもまだ2016年だからウチは間違った事いってないよ。
  小夜ちゃん、落ち着きすぎにゃ!
  何いってんの、ミケ。慌てたらミスを招いて時間をロスしちゃうじゃない。こういう時こそ落ち着かなきゃだよ。
  そういう事じゃにゃいにゃ!
  というわけで毎年恒例のベスト&ワースト、始まりまーす。
  はぁはぁ、まずはワースト10からにゃ。


 1 インデペンデンス・デイ:リサージェンス
 2 Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
 3 超高速! 参勤交代リターンズ
 4 仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー
 5 バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生
 6 10 クローバーフィールド・レーン
 7 X-MEN アポカリプス
 8 アズミ・ハルコは行方不明
 9 ファインディング・ドリー
 10 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ

 スーパーヒーローものが多いにゃあ……。
  確かにその通りだけど、ウチは決してスーパーヒーローものが嫌いなわけじゃないよ。むしろその逆で好きだよ。これはいわゆる愛の鞭ってやつね!
  でも9位の「ファインディング・ドリー」や10位の「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」は面白かったじゃにゃいか。
  ウチもそう思うよ。「ファインディング・ドリー」はピクサーが志を失ったんじゃないかって気がしたから。
  志?
  これは第一作の「トイ・ストーリー」の頃からいわれている事だけどピクサーの映画って作り手の事情を反映しているのね。前作の「ファインディング・ニモ」は子離れの話だったし。「モンスターズ・インク」は子供とどう向き合うか、その困惑をサリーとマイクに託して描いていた。でも「ファインディング・ドリー」にはそういたものは見られない。面白かったけどただのドタバタになっていた。だから苦言を呈するつもりであえてワーストに入れたんだ。
 「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」をワーストに入れたのも同じような理由。スーパーヒーローは政府の監視下に置かれるべきかというテーマをめぐる葛藤が話の核だったのに後半は復讐劇にスライドしてしまい、前述のテーマをうやむやにしてしまった。難しいとは思うし、正解なんてないのかもしれない。それでもウチは作り手側の考えた答えを知りたかった。
  「X-MEN アポカリプス」もそうにゃの?
  そうだね。ストーリーにひねりがなくて単調だったり、マグニートーの怒りがあれで鎮まるのか疑問だった事も大きいけど何より今までの「X-MEN」は差別をめぐる物語だったのに「アポカリプス」は強大な敵を倒すだけの話でしかなかった。これがワースト入りの一番の理由だね。家族を奪われたマグニートーの心情を丁寧に描いていればワーストには入れなかったと思う。
  にゃるほど。ワーストというよりは“もっと頑張りましょう”だにゃ。
  「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」と「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」は別だよ。この二作は本当にひどかった。
  「仮面ライダー平成ジェネレーションズ」は脚本がメチャクチャすぎたもんにゃあ。
  ゴーストが再び変身できるようになるくだりなんかホント強引だったね。
 鎧武が来るまで泊進ノ介が変身できない等レジェンドライダーに気を配っていたのには好感が持てるけど、その配慮を敵キャラにも向けてほしかった。
  何でパックマンにゃのか、何で清宮が狙われたのか全くわかんにゃいもんにゃあ。
  「ピクセル」のパクリ?
 「バットマン対スーパーマン」も脚本がひどかった。
  レックス・ルーサー、何考えてるのかわからにゃいにゃあ。
  コンプレックスがあるのはわかるんだけどね……。宇宙からの敵を示唆するシーンがあるけど、「アベンジャーズ」が第一作でやった事をもったいぶってやられてもね……。
 原作コミックを知らないとわからないシーンが多く、「マン・オブ・スティール」を観ただけじゃ完全に理解することはできない。正直、アメコミが普及しているとはいえない日本じゃ敷居の高い映画だと思う。
何でそんなシーンが多いのかっていうとおそらく続編への伏線だと思う。でも伏線が多すぎて本筋の理解を妨げているのは問題だよ。
 「ウルトラマンタロウ」や「ガメラ3 邪神覚醒」と同じくスーパーヒーローの戦いに巻き込まれた一般市民の被害って問題を取り入れた点は評価するけど、活かし切れていない。
  市民の反応ってクライマックスには関係にゃいもんにゃあ。
  その点もマイナスだね。
 6位の「10 クローバーフィールド・レーン」はにもいったけど、宣伝が映画自体を台なしにした前代未聞のケース。
  映画ファンにゃらタイトルの時点でおやっ? と思ったろうにゃ。
  それでもあの予告とポスターはないよ。サスペンスも何もあったもんじゃない。
 8位の「アズミ・ハルコは行方不明」は逆ミソジニー映画。オチのつけ方もそれでいいの?  って思っちゃう。
  地方の現実を容赦なく描いた点はいいと思うにゃ。
  3位の「超高速! 参勤交代リターンズ」は変に深刻にしちゃって前作の味を殺してしまった。
  駄目にゃテコ入れの典型だにゃ。
  今回ワースト10には入れなかったけど「グランドイリュージョン2 見破られたトリック」も前作の味を壊していた。
 第2位の「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」は肝心の事件がしょぼくて、とてもホームズが手こずる事件とは思えない。それに日本の描写が微妙なうえに無くてもストーリーが成り立ってしまう。
  栄えある第1位「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」は内容ゼロ、誰もが認める駄作だにゃ。
  前作は初めての宇宙人による侵略ってことで描写にインパクトがあったけど、「リサージェンス」では宇宙人の存在は既知のものとなっている。なのに前作の拡大再生産みたいな描写なのでインパクトは無し! 「映画秘宝」のトホホの上位に入るんじゃないかな。
 さて次はベスト10の発表だよ。


 1 残穢 住んではいけない部屋
 2 シン・ゴジラ
 3 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
 4 ナイトクローラー
 5 PK
 6 野火
 7 機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY
 8 日本で一番悪いヤツら
 9 64 ロクヨン 前後編
 10 ウォークラフト

  あれ、「シン・ゴジラ」が1位じゃにゃいんだ?
  でも2位だよ。決して低く評価しているわけじゃない。
 観る前はツイッターに書いた通りの不安を抱えていた。


  一般市民の視点が抜け落ちているってとこは当たってたにゃ。
  だけど「シン・ゴジラ」の場合は欠点にはなっていない。04年の「ゴジラファイナルウォーズ」で核をいい換えていたから心配していたけど、杞憂どころかむしろ核を前面に押し出していた。
  どう見ても今度のゴジラは東日本大震災や福島第一原発事故をモチーフにしてるもんにゃあ。
  だからといって反原発映画かというとそうとはいえない。もしそうならゴジラがまき散らした放射性物質の半減期がわずか数か月なんて描写はしないはずだからね。
  そういえば放射線が出ている事は描写されているけど被爆の描写は無かったにゃあ。
  核に限らずあらゆる論点に対し「シン・ゴジラ」は神経質なくらい中立であろうと努めている。
 前半部は日本の安全保障の問題点を浮き彫りにしていて緊急事態条項は必要という人達を喜ばせていたけど、第四形態になったゴジラに対し自衛隊は無力だった。それ以上に問題視すべきな事にアメリカは日本政府に何の相談も無く爆撃機を飛ばすわ、東京を核攻撃しようとするわで、アメリカの前には日本政府の意思なんて無いも同然だよ。「シン・ゴジラ」の日本はパートナーではなく属国として描かれているんだ。その事に気づいている人って結構少ないのかも知れないね。
 既に多くの人が指摘している事だけど「シン・ゴジラ」は前半と後半で大きく異なる。その境界線といえるシーンある。
 米軍の攻撃で初めてゴジラがダメージを受ける。それに応じてようやく熱線を放つんだ。ちょっと話はそれるけどなかなか熱線を出さないから「シン・ゴジラ」のゴジラは熱線を出さないのかって不安になってたんだ。
  超巨大とはいえ生物だもんにゃ。
  そう。だからリアルを追求した結果熱線はオミットってありうるとそれまで思ってたんだよ。
 この熱線、待たされた甲斐がある斬新なものだった。
 吐くまでのプロセスや収束してレーザーのようになるあたり「ナウシカ」の巨神兵を思わせるね。
  背中や尻尾からも出るのは「シン・ゴジラ」のオリジナルにゃ。
  熱線が避難のために首相をはじめとする閣僚全員を乗せていたヘリコプターを直撃し、内閣は全滅。その結果、内閣は刷新され、主人公矢口蘭堂の権限が拡大し、事を進め易くなった。
 これも多くの人が指摘している事だけど同じ乗り物に内閣全員が乗るなんて事は起こりえない。映画のような事態を避けるために分散させるものなんだ。
 内閣が健在じゃ矢口蘭堂は思うように動けない。だからリアルじゃないとわかったうえでこのような展開にしたんだと思う。
 前半の内閣が日本の現状をリアルに反映させたものなら、後半の内閣は理想に近い日本といえる。
  でもそれって裏を返せばありえにゃいってことじゃにゃいの?
  そう! 先もいった通り内閣全員が同じ乗り物に乗るなんてことはありないのだから迅速に行動する政府も嘘ってことになる。
 「シン・ゴジラ」が抱えるこの問題に対し一番厳しいのは「Real Sound」の宮台真司のコラムだと思う。そして「現代ビジネス」の辻田真佐憲の「シン・ゴジラ」評
「挙国一致し世界に実力を見せつける日本というのもまた虚構なのではないか。願望の発露といってもよい。それゆえ、本作の内容を正確に反映するならば、『願望(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。』とでもいうべきであろう」と的確な指摘をしている。
 正直、庵野監督の意図はわからない。
  興業的成功を狙った可能性もあるにゃ。
  でもゴジラが熱線を放って内閣を全滅させた瞬間に映画は「現実(ニッポン)」対虚構(ゴジラ)」から「願望(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」にシフトしたのだけは確か。
 興行収入を考えればこの変化は正しかったんだと思う。
 最近、日本スゴイって内容の書籍や番組がヒットしているけど、それって日本人が自信を無くしている事の反証だよね。「シン・ゴジラ」の後半はリアルな対怪獣シミュレーションから自信を喪失した日本人を慰撫するものへと変わった。だからこそ大ヒットしたんだ。
  それっていけにゃい事にゃの?
  声高に非難される事ではないだろうね。でもいい事でもない。ウチが挙げた「シン・ゴジラ」論はどちらもその点を問題視している。いや、宮台真司は危険視していて、その理由にはウチも一理あると思う。
 ウチは徹頭徹尾リアルな対ゴジラ映画を観たかった。そんな映画だったらヒットしなかったかもしれないけど。
 こうした理由で第1位ではなく第2位になったんだ。瑕疵があるとはいえそれでも第2位なんだから否定しているわけじゃないんだよ。
 「シン・ゴジラ」を抑えて第1位に輝いたのは「残穢 住んではいけない部屋」。怪現象の原因をつきとめるミステリー的な筋運びのホラー映画だけど、同時に日本の都市論にもなっているのが凄い。
 第3位の「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」については「20世紀の魔女狩り」で、第10位の「ウォークラフト」は「ダンカン・ジョーンズのオーク革命」で取り上げたので割愛するね。
  「ウォークラフト」も完結してにゃいけど「バットマンVSスーパーマン」よりはマシにゃ。
  第4位の「ナイトクローラー」はスクープ映像を追うビデオジャーナリストを通じて現代メディアの病理を描いたピカレスクロマン。
  以外にゃのはインド映画の「PK」がランクインしてる点だにゃ。
  インド映画の御多分に漏れず上映時間は長かったけど、それを感じさせなかった。何より宗教否定ともいえる展開をよくインドでやれたなって思う。
 主人公PKは実は宇宙人。彼は地球に来て早々、宇宙船のコントロール装置を盗まれてしまった。コントロール装置を探すうちに彼はいろいろな宗教に出会い、信者の話を聞くうちに神様を見つけて、彼に相談すればコントローる装置を取り戻せると思い込む。PKの信仰心皆無の神様探しはやがて宗教の矛盾を指摘する運動に発展するんだよ。観ていてワクワクしたね。
 第6位の「野火」は大岡正平の小説を塚本晋也が映画化。去年の公開作品だけどウチが観たのは今年だったので。戦場の理不尽に追い詰められた男達の狂気に圧倒されたよ。お勧めを超えて必見の一本だね。
  「ナイトクローラー」も去年の映画だにゃ。
  うん、去年の映画だった、観なかったのは迂闊だったよ。
 第7位は「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」も戦場の狂気を描いたアニメだった。元は一話15分のネット配信アニメで、全4話。それを劇場用に再編集したもの。正直、そんな尺であの原作を描けるのか不安だったんだけど、観たらびっくり。原作以上の出来栄えだった。
 ラスト、サイコザクを失ったダリル・ローレンツがゲルググに乗って戦うというアニメオリジナルのシーンがある。サイコミュで自分の手足のように動かせるサイコザクの後に非サイコミュ機のゲルググに乗るダリルの表情は見もの。このシーンを加えたことで深みを増している。
 第8位は北海道県警の不祥事を描いた「日本で一番悪いヤツら」。実録物の傑作だよ。
本来は一つの作品として扱うべきではないんだろうけど第9位の「64 ロクヨン」は二つで一つの作品なので二つ合わせてのランクイン。骨太なストーリーがいい。
  ベストは邦画が6本を占めているにゃ。
  ウチらのベストに限らず今年は邦画が豊作だった。来年は新年早々「ドント・ブリーズ」「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」といった面白そうな映画が上映されるし、「スターウォーズ」のエピソード8や「メッセージ」、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、「哭声 コクソン」などが控えているから洋画の巻き返しがあるかもね。
  楽しみだにゃ。
  今年はあんまり更新できなかったね。
  東京国際映画祭が遅れに遅れたのは毎年の事だけどにゃ。
  今年はやらないかも。
  堕落したにゃあ。
  決めた、それにしよう。
  え?
  来年の抱負だよ。
  更新を増やすのかにゃ?
  いや、東京国際映画祭のを年内にやる!
  駄目にゃん!
  何はともあれ後数分で2017年。
  今年は散々だったからにゃあ、来年はいい年であってほしいにゃ。
  本当だね。
 & それでは皆様、よいお年を。


テーマ : 映画
ジャンル : 映画

tag : ゴジラ 映画 作品 2016

ダンカン・ジョーズのオーク革命 映画「ウォークラフト」

 豊橋ミケ(以下猫) 小夜ちゃん、これもう終わってるんじゃにゃいの?
 九条小夜子(以下九) 何いってんの。TOHOシネマズ新宿と池袋のシネマ・ロサでまだやってるじゃない。
 何をやっているかというとゲームが原作の映画「ウォークラフト」。
  「D&D」や「ロードス島戦記」みたいにゃハイファンタジーだにゃ。
  RPG的といった方が通りがいいかもね。
 確かに原作であるゲームを知らないとわからない部分は確かにある。でもRPG的ファンタジーに慣れた人ならさっぱりわからないってことはないと思うよ。
 完結していないせいもあって、映画としての完成度は高くはない。ファンタジーに興味が無い人が観たらつまらないと思うかも。じゃあ駄作かというと決してそうではない。
 ストーリーを要約すると異世界から侵攻して来たオーク軍とそれに対抗する人間達の闘争劇。
  要約しちゃうと本当に典型的だにゃ。
  そうなんだよねぇ。でもこの話を人間側の視点だけで描いたらそれこそ凡百のRPG的ファンタジーなんだけど、「ウォークラフト」は違う。人間とオーク、双方の側に主人公といえるキャラクターがいて、それぞれの立場から物語が語られているんだ。だから他のゲームや映画では邪悪な怪物として描かれるオークも価値観の異なる知的種族として描かれ、彼らなりの倫理観が示されている。一方の人間側も正しい人ばかりではなく、世界を滅ぼそうとする悪人がいる。
  紋切り型のモンスターじゃにゃいんだにゃ。
  そういう事。オーク側の主人公がフロストウルフ族のデュロタン。オーク達の故郷は滅びつつあり、彼らは新天地を求めて人間達の世界に来たんだ。気性の荒いオークの中では彼は理知的な人格者。
  その前にオーク達がどうやって異世界に来たかを説明しておくにゃ。
 オーク達の指導者は戦士ではなく魔術師のグルダンにゃんだにゃ。グルダンの魔術は生命を代償に発動するものにゃんだにゃ。人間の世界に通じるゲートを開くためにたくさんの知的種族の命が必要にゃんだにゃ。
  侵攻前からグルダンの魔術に疑問を抱き、将来、オークに災いをもたらすのではないかと危惧していたデュロタンはグルダンに反旗を翻し、一対一の決闘に持ち込む。
 決闘は魔術を使ったグルダンが勝った。しかし、その勝ち方はオークにとってはタブーを犯すもの、戦士の誇りを汚す行為だった。
  他の作品じゃ勝つためには手段を選ばにゃいにゃ。
  「ウォークラフト」のオークには彼らなりの倫理があるんだ。
 グルダンはオーク達から卑怯者、決闘を冒涜したと非難されるけど、折悪しく人間達の軍隊が攻めてきて、決闘の事はうやむやになってしまう。
  人間とオークの戦いに決着はつかず、人間達はオークの勢力に対抗するべくエルフやドワーフと同盟を結ぶところで映画は終わるにゃ。
  終りじゃないよ。オークの物語にはまだ続きがあるんだ。
 デュロタンの反乱を知ったグルダンは彼の一族を虐殺する。デュロタンと共に人間の世界に来た彼の妻は殺される直前にまだ赤ん坊の息ゴエルを船の様な器に入れて川に流すんだ。
  それってまるで……。
  モーゼみたいだよね。
 ゴエルが人間の手で育てられる事を示唆するシーンで終わる。
  これで退場ってことはにゃいよにゃ。
  製作者は続きを作りたくてうずうずしてるみたいだね。ゴエルがどちらの側につくのか、あるいは同盟とオークの仲裁者になるのか、モーゼがユダヤ人をエジプトから脱出させたようにオークをさらに異なる世界に導くのか。いずれにせよ続編があるなら彼が主役になるかもしれないね。
  オークが主役ってかにゃり珍しいにゃ。
  ファンタジーにとっては画期的な事だよ。
  初めてかもしれにゃいにゃ。
  いや、20年以上前の1988年に山本弘が「モンスターの逆襲」ってゲームブックで同様の試みをしている。山本弘はその後もモンスターを倒されるだけの怪物ではなく、独特の思考や文化を持つ生物として描いている。彼が「ウォークラフト」を観たら絶賛するんじゃないかな。

 ずいぶん大胆な構想だなぁって思ってスタッフを調べてみて納得したよ。監督がダンカン・ジョーンズなんだ。
  誰それ?
  まだ「ウォークラフト」で三作目の若手監督だけど、デビュー作の「月に囚われた男」で企業に使い捨てられるクローンの悲哀を描き、「ミッション:8ミニッツ」では並行世界の他人に死ぬ直前の8分間だけ憑依、それを何度もくり返してテロを防ぐというループものの傑作を撮って映画通やSFファンから一目置かれている監督なんだ。RPG的ファンタジーである「ウォークラフト」を監督したのは正直、意外だけどSFやファンタジー要素が皆無な作品を撮るよりは納得できる。
  へー。
  ゲームの事は全く知らないけどウチはダンカン・ジョーンズ監督が続投するなら続きが観たいな。
 ちなみに「ウォークラフト」のエルフって何故か目が光ってるんだ。
  日本人にとってはかなり違和感のある姿だにゃ。
  ウチも同感だけど、それはそれでいいじゃない。そもそもオークはトールキンの創作だし、エルフにしたって伝承とはだいぶイメージが違う。「指輪物語」が今のエルフ像を確立したと思ってる人が多いけど、「指輪物語」のエルフが体力も人間を上回っていて、今、ウチらがイメージする優雅だがきゃしゃな種族なんかじゃないんだ。それに「ロード・オブ・リング」を観ればわかる通り昔のエルフの耳は笹の葉の様な細長い形じゃなかった。あれって実は日本発祥で、「ロードス島戦記」のディードリッドから始まったものなんだよ。
 ファンタジーの世界の住人達にとっては変わっていくのは珍しい事じゃない。こうでなくてならないって決めつけるよりも変化を受け入れる方が幅が広がるんだから喜ぶべきことなんだ。
  「ウォークラフト」のオーク像が浸透するかどうかはまだわからにゃいけどにゃ。
  可能性を開いたのは確か。やはりダンカン・ジョーンズは才人だね。


テーマ : 映画
ジャンル : 映画

tag : ウォークラフト オーク ファンタジー ゲーム ダンカン・ジョーンズ 山本弘 モンスター エルフ

20世紀の魔女狩り 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

 九条小夜子(以下九) いやー、いい映画だった。気が早いけど今年のベスト1かもしれないね!
 豊橋ミケ(以下猫) それって7月22日、つまり明日公開の映画だにゃ。
  ……うん。
  いつ観たのかにゃあ?
  ……し、7月15日。
  また遅れたにゃあ。
  しょーがないじゃない! ウチも早くしょうと思ってたんだけど、冷蔵庫が壊れたりとかいろいろあったのよ! ミケだって知ってるでしょ!
  はいはい、逆切れしにゃい。さて今回は「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」の話だにゃ。
  その前にどこで観たかしりたくない?
  どこでってあたしも一緒に観たにゃ。
  もー、ミケったらぁ。そういう時は「どこにゃの?」って訊かなくちゃ。そういってくれればスムーズにJCOMのおうちで試写会の話につなげられるでしょ?
  ……あ~そうだったにゃ~、ごめんごめん(棒読み)。
  実はうちらJCOMに加入してるんだよね。で、1、2年くらい前からJCOMオンデマンドで試写会として上映前の映画を抽選で配信するようになったのよ。興味がなかったわけじゃないんだけど今までは観たいと思う映画が無くてね。「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」で初めて応募してみたの。
 最初に驚いたのは応募してすぐに当選したかどうかがわかる事。
  そうそう。リモコンを押したらすぐに当選しましたって画面が出たもんにゃ。
  当選告知に関してはオンデマンドにもJCOMマガジンにも何の説明がなかったからさ、ウチはネットや雑誌の試写会と同じように後でハガキかメールかで通知が届いて、それにパスワードとかシリアルコードとかが書いてあるものと思ってたのよ。
  根拠は?
  ……今までの経験。ウチらオンデマンドとかネット配信とか利用しないからよくわからないんだけど、皆こうなの?
  それ以前にJCOM以外で試写会やってるのかにゃ?
  それに答えられないくらい無知なのよ、ウチら。
 おうちで試写会を観られるのは「トランボ」の場合、7月14~16日の間だけ。で、ウチは15日に観たんだよね。それでブログで取り上げたい、でもその前に今度はメモを取りながらもう一回観られたら……と思って、駄目で元々と思って16日にリモコンのボタンを押したら観られたのよ。
  これは意外だったにゃあ。
  観ようとしてボタンを押したウチがいうのもなんだけどこれっていいのかな?
  何が?
  だってさ、このシステムだと3日間観放題ってことだよね?
  回数制限があるようには見えにゃかったにゃ。
  それって配給会社や映画館にはいい事なのかな?
  あ、何とにゃくわかったきたにゃ。
  普通の試写会は1枚の試写状で当選者の他1名、つまり計2名まで観られる。ところがJCOMのおうちで試写会は何人でも観られる。それも3日間だけとはいえ何度もね。映画館にとっては客を取られてるのと同じじゃないの?
 金をとって第三者に観せることだってできる。そうなるともう海賊版と変わらないんじゃないの?
  配給会社は問題にゃいって思ってるからおうちで試写会に作品を提供してるんじゃにゃいの?
  まあね。でなければウチらが観られるわけはないんだし。でもいいのかな? って思っちゃうんだよ。
  本題に入るにゃ。


  冒頭、字幕で状況の説明が入る。1930年、ドイツやイタリア、日本など、世界各地でのファシズムの台頭と世界大恐慌を受け、多くのアメリカ人が共産党に入った。第二次世界大戦で米とソ連が共にナチスドイツと戦うようになると入党者の数はさらに増えた。ダルトン・トランボもその一人で、彼が共産党に入ったのは1943年だった。
 しかし、第二次世界大戦が終わって米ソ冷戦が始まると状況は変わり、共産主義者は敵視されるようになる。
 共産主義への恐怖から下院非米活動委員会が発足された。彼らは疑わしき者を議会に呼び出し審問にかけた。しかし答えはイエスかノーかの二択で、一切の弁解を許さなかった。それだけではなく仲間の密告を強要した。
 審問のついてはロバート・デ・ニーロ主演の91年の映画「真実の瞬間」って映画にその様子が描かれている。
 密告に応じなければハリウッドから追放される。それを恐れて密告した結果、今度は密告された人が密告を強要される。
  それじゃきりがにゃいにゃ。
  だからたくさんの人を巻き込む結果になったのよ。
 密告を拒んだ者はハリウッドから追放され、職を失った。最悪の場合、投獄されることもあった。
  20世紀の魔女狩りだにゃ。
  まさにその通り。冷戦下、敵への恐怖から起こった集団ヒステリーだった。ハリウッドは人目を引くから真っ先に標的にされたけど、20世紀の魔女狩りはそれだけに留まらなかった。後にはハリウッドとは関係ない一般人や軍人までが対象にされたんだ。
  小夜ちゃん、一応赤狩りって名前があるんだからそっちを使おうにゃ。
  20世紀の魔女狩りの方が実態を表していると思うんだけどなー。ともかく赤狩りを恐れてハリウッドからヨーロッパに活動の場を移した映画人も多かった。
  入浴中のトランボの姿から映画は始まるにゃ。
  おっさんの入浴シーンから始まる映画なんて後にも先にもこの「トランボ」だけだろうね。
  その手の趣味のお客さんが増えるにゃ。
  イヤなサービスシーンだな!
 ただの入浴じゃない。ダルトン・トランボは風呂に入りながら仕事をする癖があった。これだけで観客に一筋縄ではいかないキャラだって印象づけている。
  トランボの仕事はハリウッドの脚本家だにゃ。
  共産主義者の排除に動いたのは政治家だけじゃなかった。ハリウッドの映画人の中からも積極的に協力する者達がいた。それがアメリカの理想を守る映画同盟で、中心となったのはジョン・ウェイン、ハリウッドの内情や映画評を書き、絶大な影響力を誇るコラムニストのヘッダ・ホッパーだった。
 ジョン・ウェインが密告に応じたエドワード・G・ロビンソンに「つらかっただろう」と声をかけ、仕事をまわすよう手配するのに対し、 ヘッダ・ホッパーは密告だけではまだ足りない、さらなる処罰が必要だと強硬に主張して、ジョン・ウェインと険悪な雰囲気になる。
  ヘッダ・ホッパーって何でそこまでするのかにゃ?
  ヘッダ・ホッパーは元女優で、その頃の屈辱的な体験が彼女を赤狩りに走らせたと示唆するシーンがあるんだよ。
  赤狩りに便乗したんだにゃ。
  そういう事。
 本当に共産主義への危機感から赤狩りに協力したのか疑わしいのは彼女だけじゃない。ジョン・ウェインは戦意高揚映画に出ていながら従軍経験は無くて、その事をトランボに指摘され、カッとなってあわやというシーンがある。
  トランボや彼の仲間達は戦場に行ってたにゃ。
  そうなんだよね。戦場に行かなかった事の後ろめたさが彼を赤狩りに走らせたのかもしれない。
 ハリウッドの名誉のためにいっておくと皆が皆非米活動委員会に協力していたわけじゃなかった。早くから非米活動委員会に反対を表明していた映画人もいたんだ。劇中でもラジオでグレゴリー・ペックが反対運動をしていた事が報じられている。
 やがてトランボやその仲間達にも下院非米活動委員会からの召喚状が届く。密告どころかイエスかノー以外の返答を許さない質問にも答えず、逆に共産党員であるというなら証拠を見せろと迫ったトランボは議会侮辱罪で有罪判決を受ける。最初のうちは控訴すれば勝てると楽観的だったトランボ達だったけど、リベラル派だった判事が相次いで急死。勝ち目がなくなり、やむなく刑務所に入ることになる。
  ちょっと話はそれるけど、刑務所の備品係の黒人の囚人がラジオで密告の様子を聞いて「チクリ野郎はムショじゃ死体だ」って言うシーンが印象的だったにゃ。
  自分は共産主義が大嫌いでトランボにも凄んで見せたのにね。たとえ共産主義にダメージを与える行為なのに許せないって事だね。
 密告って仲間を裏切るってことなんだ。だから先にいったジョン・ウェインも「つらかったろう」って声をかけたんだ。
  黒人の台詞の裏返しだにゃ。
  この男達の言動からは裏切りに対する嫌悪が感じられる。
  男達だけじゃにゃいんじゃにゃい? 劇中に流される映画のシーンにも裏切りに関するものが目立ってたにゃ。
  エドワード・G・ロビンソンの映画を再現したシーンも裏切りに関するシーンだったね。
  一番強く主張しているのは「スパルタカス」だにゃ。
  劇中に引用されたシーンは敗れたスパルタカスを殺せと命じられた黒人剣闘士がそれを拒むシーンだった。
  エドワード・G・ロビンソンが圧力に屈して密告した事を考えるとその引用は意味深だにゃ。
  見ものなのは刑務所を出てからのトランボの巻き返し! 密告を拒んだトランボとその仲間達はハリウッドメジャーからほされてしまった。しかし、トランボはその逆境を自分の才能だけで切り開き、下院非米活動員会の圧力を無効化してしまうんだ。
 これは凄い事だよ。ペンが政治権力に勝った数少ない例、これこそ奇跡といっても過言じゃない。
  でも皆が皆トランボみたいじゃにゃかったんだよにゃ。
  そう。残念だけどね……。トランボが赤狩りに勝った男なら赤狩りに屈した男の代表として描かれたのがエドワード・G・ロビンソンだろうね。彼は大切にしていた絵画を売り払ってまでトランボの裁判を支援していたけど、仕事をほされた末にトランボの名を下院非米活動委員会に言ってしまうんだ、
 そして圧力をはねのけられず消えて行った映画人の代表として描かれているのがトランボの仲間の一人のアーレン・ハードだろうね。


 ウチらは東京都の青少年健全育成法の成立を阻止できなかった。その体験があるからトランボに過剰に肩入れしてるのではないかって気はある。
 ラスト、老境にさしかかったトランボはハリウッドから功労賞を贈られ、その式典で赤狩りの時代を恐怖に踊らされた時代だった言う。今、まさに同じ事が世界の各地で起こっている。エンディングで「共産党員はモスクワのスパイ」と書かれた垂れ幕を掲げる写真や「よい共産党員は死んだ教案党員だけ」と書かれたプラカードを持つ男の写真が流れる。ウチはこの光景にイスラム教徒は全てテロリストとか、メキシコ人は不法労働者とか言うトランプや彼の支持者が重なって見えた。
  あの時代だけに限った話じゃにゃいんだにゃ。
  アメリカだけの話でもない。同時期、日本でもレッドパージといってGHQの指示で共産党員が公務員や民間の企業から追放され、その事実がわかると再就職は難しかった。
  ほされたんだにゃ。
  レッドパージにはNHKも参加していた。
  昔からお上のいいにゃりにゃんだにゃ。
  公営放送というより国営放送って感じだよね。
 第二次世界大戦時、アメリカで生まれた二世、三世を含む日本人を強制収容所に入れたのも対象や理屈が違うだけで赤狩りやイスラム教、移民へのヘイトと同じものだろう。
 共産主義者達は日本人のように裁判無しで隔離されたりはしなかった。それをもって人類は少しは進歩したといえるかもしれない。ではイスラム教徒や移民はどうだろう?
  トランプが当選したらどうにゃるかわからにゃいもんにゃあ。
  グレゴリー・ペックのように赤狩りへの反対を表明した人はいたからね。それでも赤狩りを止められなかった。
 トランボの身に起こった事は将来、誰の身に起きても不思議ではない。今、世界はそんな方向性に向かいつつある。そんな時、敵への過剰反応の恐ろしさとそれに抗った人間の強さを描いたこの映画が作られ、公開される事には大きな意味がある。共産主義がどうのこうのなんて低い次元の話にしちゃいけないよ。
 キング・ブラザース社長を演じたジョン・グッドマンが圧力をかけにきた下院非米活動委員会の人間を追い払うシーンは痛快で、ウチがいうような理屈抜きで観ても充分面白い。正直、あの時代のハリウッドの知識があったらもっと楽しめたかもと思う。
  グレゴリー・ペックを知らない日本人、多いかもにゃ。
  エドワード・G・ロビンソンなんてウチも知らなかったよ。というかダルトン・トランボ自体この映画で知ったんだし。
 くり返すけど難解な思想映画ではない。ハリウッドの内幕ものとして観ても充分楽しめるし、一緒に観た人と話し合ってみれば意外な一面が見えてくるかもしれない。
 ただ、事実を忠実に映画化しているわけじゃない点は要注意。カーク・ダグラスもオットー・プレミンジャーもひょこっと現れたように描かれているけど実際は早い時期からトランボと接触していたんだ。
  大河ドラマと同じと思えばいいにゃ。
  う~ん、確かにその通りなんだけど一緒にしてほしくない気持ちも。
  ところで小夜ちゃん、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」ってタイトル、おかしくにゃい?
  いわれてみればそうだねぇ。映画を観るとむしろ愛されていたような気が……。



テーマ : 映画
ジャンル : 映画

tag : トランボ ハリウッド 共産 トランプ 赤狩り

前座かくして真打ち隠さず 「10 クローバーフィールド・レーン」(ネタバレ有り)

 九条小夜子(以下九) この映画、ウチの16年ワースト10に間違いなく入るよ。
 豊橋ミケ(以下猫) えっ、そこまでひどかったかにゃ?
  映画以外があまりにもひどかったのよ!
  ……いってることがよくわからにゃいにゃ。
  この映画はラスト数分以外の殆どが地下のシェルターが舞台なの。
  いわゆる密室劇だにゃ。
  部屋数は多いけどそうなるね。
 ヒロインのミシェルは恋人とケンカ別れして車で出ていく。その最中に事故に遭って気を失ってしまう。気がつくと質素な部屋でマットレスの上に寝かされていた。
  気づくと足が鎖で壁につながれていたにゃ。
  あれじゃ誰だって誘拐監禁された!? って思っちゃうよね。
 やがてハワードという男が現れ、地球は敵の攻撃を受け壊滅状態にある事、それに備えたシェルターに事故に遭ったミシェルを連れてきたと告げる。
  さらに外は有毒ガスで満ちているから出られにゃいとも。
  スマホは圏外でつながらないし、シェルターにはTVもラジオもネットも無い。情報源はハワードただ一人。先に挙げた事もあってミシェルは隙をついてハワードから鍵を奪い、外へ通じる扉を開けようした時、初めてハワードの言葉が真実だったと知る。
 以降、昔からハワードを知る青年エメットと一緒に三人の共同生活が続く。しかし、換気装置の修理の時に見つけた物がきっかけでハワードが嘘をついている事がわかり、再び彼への不信感が高まる。
 ミシェルは手近な物でガスマスクと防毒スーツを自作、脱出を試みるんだけど……。
  脱出に成功するのは観てにゃくてもわかるにゃ。
  そうなんだよねえ。だって予告編でその後の事を流してるんだもん。
  ポスターにゃんかあの宇宙船が載ってるにゃ。
  そうなんだよね。この映画ってさ、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」みたいに○○だと思って観てたら途中から××になった! びっくり!! を狙ったヤツだよね。ペース配分はだいぶ違うけど。
  もっとわかりやすくいうとどんでん返しだにゃ。
  どっちにしたって先に知ってたら効果激減だよ。ウチは予告もポスターも観ていたからシェルター内でのシーン、特に前半が長く感じられた。
  答えわかってるもんにゃあ。
  確かにハワードが極限状況を生き延びたい一心で威圧的になってるだけなのか、それともサイコ親父なのか? それは予告ではわからないけどさぁ。
  ミステリでいえば真犯人やトリックを暴く前に犯人かもと思わせるような行動をした人が何でそんな事をしたのかを説明するようなものかにゃ。
  ジョン・グッドマンには失礼だけど前座だよね。
 想像してみて。予告がシェルター内のシーンだけだったら……。
  外に出てみたら怪物が襲ってくるにゃんて予想しにゃいから驚くにゃ。
  でしょ? タイトルが「10 クローバーフィールド・レーン」だから「クローバーフィールド」を知ってる人はただのサイコ・サスペンスじゃないなと見抜くだろうけど、この映画を作った人達は明らかにミケがいったことを狙っていたのに日本の宣伝担当者が台無しにしちゃったのよ。
 よくさ、予告でいいシーンを全部使っちゃったって話は聞くけど、それはあくまでもインパクトに限った話じゃない。なのに予告でネタバレって前代未聞だよ。
  宣伝が映画をつまらにゃくした珍しい例だにゃ。
  ほんと、ミケのいう通りだよ。
 話を戻すけど、もし違う予告、ポスターだったとしてもベストには入れなかったと思う。
 でもワーストにも入れなかった。
  そうにゃるとブログにも取り上げにゃかったにゃ。
  うーん、確かにそうなるね。
  悪名も名のうちにゃ。全く相手にされにゃいよりは叩かれてでも取り上げてもらった方がいいにゃ。案外日本の宣伝も外れじゃにゃかったかも。
  そりゃ詭弁だよ! やっぱこの宣伝はまずいって。
  話は変わるけど、タイトルの「10 クローバーフィールド・レーン」ってどういう意味にゃの?
  地名だよ。クローバーフィールド・レーン10番地みたいな意味。レーンの意味も字幕いあったけど忘れちゃった。最後の最後で看板が映ってたでしょ。
  あーっ、思い出した! 思い出したにゃ!
  実のところ「クローバーフィールド」とのつながりが明示されてるのってここだけなんだよね。だからウチ、いつも使う前作ってフレーズを使わなかった。
  え、じゃ小夜ちゃんは続編じゃないって思ってるの?
  うん。だって「クローバーフィールド」の後の話なら攻撃を受けたって話、ミシェルにも自然に受け入れられたと思うんだ。それに「クローバーフィールド」のラストに出てきた怪獣と「10 クローバーフィールド・レーン」の怪物って明らかにデザインの方向性が違う。だからウチは関連性は無いと見ている。
  じゃあ何でクローバーフィールドにゃんてタイトルにつけたのかにゃ?
  うーん、わかんない。そもそも「クローバーフィールド」の時は地名じゃなかったからね。
 まぁあんまり深く考えない方がいいと思うよ。ストーリーに関係してるわけじゃないし。
  タイトルロールにゃのに無関係……。
  そうだよ。他の地名にしてもストーリーは変わらないだろうね。マサチューセッツ州アーカムとか東江戸川3丁目とかでも同じだったと思うよ。
  最後のはストーリーは同じでもムードはかにゃり変わりそうだにゃ。




テーマ : 映画
ジャンル : 映画

tag : クローバーフィールド 予告 映画

最新記事
カテゴリ
最新コメント
一読の価値あり!
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

グーバーウォーク
ブログ内容の分析結果で謎の生物グーバーが産まれ、このブログの今を表します。
検索フォーム
投票ボタン
blogram投票ボタン
QRコード
QRコード
ツイッター
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。