没後10年企画なのに…… 池袋・文芸坐 「実相寺昭雄特撮オールナイト 第2夜」

 九条小夜子(以下九) 3月18日に池袋文芸座で開催された「実相寺昭雄特撮オールナイト 第2夜」に行ってきました~。
 豊橋ミケ(以下猫) トークショーのゲストは上映作品を選んだ映画評論家の樋口尚文と「ウルトラセブン」のアンヌを演じたひし美ゆり子、後期実相寺監督作品に多く出た女優の三輪ひとみだにゃ。
  さらに実相寺作品の多くでカメラマンを務めた中堀正夫が途中から参加。実は上映作品に唯一関わっている人なんだよね。
  そういう事いわにゃいっ!
  三輪ひとみと実相寺昭雄の組み合わせといえば90年代に江戸川乱歩作品を映像化した「D坂の殺人事件」だね。
  三輪ひとみは小林少年を演じていたにゃ。
  ストーリーにはあんまり絡まないんだけど、嶋田久作演じる明智小五郎の“お稚児さん”なんじゃないかと邪推させるシーンがあったね。でも一番強く印象に残ったのは……。
  ラストシーンだにゃ。
  事件が解決した後、真田広之演じる贋作作家蕗谷が使っていた口紅を手に取り、紅をひく。映画は小林少年の意味ありげな微笑みを映して終る。
  その妖艶にゃこと!
  蕗谷は贋作を作る際、女装した自分自身をモデルにした。また、蕗谷は必ず贋作を二つ作り、一つを本物と称して依頼主に渡し、本物は破棄してしまうんだよね。実相寺版「D坂の殺人事件」は偽物の本物に対する屈折した想いを描いた作品でもあるんだ。ウチがいった事を踏まえてラストシーンを観ると、いろいろと想像をかきたてられるよね。
 ウチは「D坂の殺人事件」は実相寺昭雄の後期の代表作だと思う。
  小夜ちゃん、小夜ちゃん。
  ああ、そうだったね。危なく上映してない作品の事を延々としゃべり続けるとこだった。ありがとね。


 トークショーの前半はひし美ゆり子の独壇場。まずは円谷プロ成田亨が和解か? って話。
 発端は青森県の団体青森ねぶたウルトラノ會がウルトラセブンとエレキングのねぶたを青森ねぶた祭に出すために始めたクラウドファウンディング
 デザインの権利問題でもめて、長い間絶縁状態だったんだよね。円谷プロ成田亨の功績をなかった事にしようとした時期もあった。成田亨の著書「特撮と怪獣 わが造形美術」によると、円谷プロがやるはずだった演劇や万博絡みの仕事の三つか四つを成田が代わりにやったので円谷プロの怒りを買った事があったんだって。そういう事も影響してると思うよ。

 特撮と怪獣 わが造形美術

  「特撮と怪獣 わが造形美術」には90年代か80年代後半に当時の円谷プロ社長の円谷皐と満田かずほが新しいウルトラマンのデザインを頼みに来たんだけど、ギャラの面で折り合いがつかにゃくて流れちゃったって話も載ってたにゃ。
  その話を信じるなら少なくとも一度は和解のチャンスがあった。それも円谷サイドから話を持ち出した事になる。
  結局お金の話でダメににゃっちゃったけどにゃ。
  この問題、今でも変わってないんだよね。ウチはデザインは作品の成否を左右するものだからデザイナーにも権利を認めるべきって成田亨の主張はもっともだって思うんだけど。
  でも最初はダサーって思っていたデザインが観ているうちにかっこよく見えてくるって事もあるにゃ。
  確かにね。
  そうにゃるとデザイナーだけの功績とはいえにゃいんじゃにゃい? 演出や特撮作品ならデザインを立体化した造形作家やアクションを担当したスーツアクターにも功績があるにゃ。
  そうなるねぇ。
  そうにゃると彼らにも権利を認めにゃいと駄目にゃんじゃにゃいの?
  ミケのいう事にも一理あると思うけど、そうなると権利者が増えちゃって、一人当たりに入る額が激減しちゃうかもしれないよ。
  難しいにゃー。
 でもまずはめでたいにゃ。
  ひし美ゆり子が何度も冬木透って言い間違えてたのはご愛敬だけどね。
 ひし美ゆり子は円谷プロのサイトの文言から両者が和解したって言ってたけど、ウチはどうかな? って思ってる。
 彼女が和解の根拠にしているサイトの文章って実は円谷プロが書いたものじゃなくて、青森ねぶたウルトラノ會の公式サイトの文章を転載したものなんだよ。
 ねぶた祭にセブンとエレキングのねぶたが出れば円谷プロにとってもいい宣伝になるから悪い話じゃないし、成田亨との確執を理由に協力を断ればイメージダウンも考えられる。
 そういった計算がはたらいて、ねぶたにだけは協力することにしたのかもしれない。
  それじゃあ……?
  和解ムードは上辺だけかもしれない。
  そんにゃあ……。
  確かに昔の円谷プロだったら成田亨の名前は出さなかったかもね。転載とはいえ成田亨の名前と彼を讃える文章を公式サイトに載せたのは軟化の兆しかもしれない。


 続いてこれはあくまでも希望なんだけど、実相寺昭雄が監督した第12話「游星より愛をこめて」の封印解除にも話が及んだ。
 安藤健二の名著「封印作品の謎」によると、1970年、小学館の学習雑誌の付録のカードの絵柄の中に第12話に登場するスペル星人があった。その肩書は「ひばくせい人」だった。付録を見た娘からこの事を教えられたジャーナリストが被爆者差別ではないかと小学館に抗議したのが発端なんだ。この抗議が新聞に取り上げられて騒ぎになり、円谷プロは第12話封印したんだ。
  え、それじゃ作品は悪くにゃいの?
  そうなるね。そもそも「セブン」の放送は67年秋から68年秋までだし。
  作品に問題があるにゃら2年も経ってから騒ぎににゃるのはおかしいにゃあ。
  でしょ? 原因を作ったのは小学館で、円谷プロはとばっちりを受けたといっていい。
 数年前に被爆者団体が許すって趣旨の話をしているし、トークショーで知ったんだけど、原因であるカードを作った小学館も「もういいんじゃない?」と言ったうえに「50周年の今年に解禁すべきじゃないか」とまで言ってるらしい。
  こうにゃると後は円谷プロ次第だにゃ。
  まさにその通りなのよ。でも円谷プロがどう思っているかははっきりしてないの。
 誰かが「満田かずほが解禁は難しいと言っていた」と言ったけど、それは昔の話で、今は変わっているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
  何もわからにゃいんだにゃ。
  でもフィルムのデジタルリマスターはもう終わってるらしいよ。
  じゃあGOサインさえ出ればいつでも公開できるにゃ。
 そういえば第12話封印はキリヤマ隊長を演じた中山昭二も知らにゃかったみたいだにゃ。
  生前、ひし美ゆり子に「12話がどうかしたのか?」って電話で訊いたそうな。それで事情を話したうえでファンから贈ってもらったビデオをダビングしてあげたんだって。
  意外と知らにゃいもんだにゃあ。
  昔は今以上に特撮の立場って低かったからね。出演した事を封印しちゃう俳優さんもいたし、撮影、放送が終わったら後は我関せずって事も多かったと思うよ。
  ビデオといえば昔はダビングにダビングを重ねた結果、相当画質が低くなってしまったものが第12話というだけで高値で売られていたそうだにゃ。
  ひし見美ゆり子の元にはファンから贈られたハワイ版、北米版、ヨーロッパ版の第12話のビデオがあるんだって。
 ビデオデッキができる前に封印されちゃったから日本での本放送や再放送の録画が存在するとは考えにくい。円谷プロが保管していたフィルムが裏に流れたらしく、ひし美ゆり子が友達に渡すためにファンに頼んでダビングしてもらう時、出所は言わないで下さいって口止めされたらしいよ。
  12話に限らず会社から流出したって話は多いにゃあ。
  ウチは実物を見た事は無いけど、台本はおろか撮影用のマスクまで売りに出されていたって噂があるし、アニメだけどサンライズで内部の人がネット等に作品のネタバレ情報を流す事はよくあった。
  あたし達が観た12話もそんなビデオの子孫だろうにゃあ。
  幸いウチは買ったんじゃなくて友達から焼いたDVDをもらったんだけど、やっぱり画質は悪かった。でも今では画像編集の技術が進んで、プロじゃなくてもリマスターできるようになったので、裏とはいえ昔とは比べものにならない程きれいになっているんだそうよ。
  Youtubeで観れたりして。
  観られるかもしれないよ。画質の低いビデオを高い金を出して買った人はお気の毒さまだね。
  小学館じゃにゃいけど「ウルトラセブン」も今年で50周年。被爆者団体ももう問題ないっていってるんだから解禁してもいいんじゃにゃいかにゃあ。
  ほんと、そうだね。12話は作品自体には問題は無いんだから。ただ円谷プロには「怪奇大作戦」の第24話「狂鬼人間」もあるから……。
  森田芳光の「39 刑法第三十九条」を先取りしたヤツだにゃ。
  右翼団体も関わってるって噂もあって、問題の深さは第12話の比じゃない。今もなお関係者の口は固く、封印の過程には謎が多い。第12話を解禁すれば「狂鬼人間」に波及するかもしれない。それで円谷プロは難色を示しているのかもしれないね。
  やはり50年もやっていると暗い面もあるにゃあ。
  手探りでやってた時代だからね。過ちもあったろうさ。


 「怪奇大作戦」つながりでオールナイトの話に移ろう。
 オールナイトのトップバッターは「怪奇大作戦」の第4話「恐怖の電話」、第5話「死神の子守唄」、第23話「呪いの壺」、第25話「京都買います」では実相寺昭雄監督作品。「ウルトラマン」、「セブン」では見られなかった仏像や木造建築等への愛着が見られる。
 円谷プロつながりではトリを飾った「実相寺昭雄監督作品ウルトラマン」。監督作品には違いないけど、映画そのものにはあんまりタッチしてないんじゃないかな。
  何でそう思うのにゃ?
  BGMの使い方ね。怪獣との戦いの場面に主題歌や「ディスコウルトラマン」を被せるなんて実相寺昭雄らしくないじゃない。
 他には実相寺昭雄がパイロット版を担当し、卒塔婆攻撃や宇宙人を追って商店街を疾走する場面をゲリラ撮影した伝説の特撮番組「シルバー仮面」から第1話「ふるさとは地球」、第7話「青春の輝き」、第8話「冷血星人の呼び声」、第9話「見知らぬ町に追われて」、第10話「燃える地平線」の五話を上映。第1話は前回のオールナイトでも上映したんだけど、樋口尚文のたっての要望で今回も上映することになったんだって。
  あたし達は前回、都合が悪くて行けにゃかったから助かったにゃ。
  ウチらは「シルバー仮面」の伝説は知っていたけど、実際に観たことは無いからね。第1話といえば作品の基本設定を紹介する基礎編。観られるならそれにこしたことはないよ。
 で、第1話なんだけど、チグリス星人の着ぐるみが本当に燃えちゃって、撮影に支障をきたした事ややたら暗い画面が話題になっているけど、ウチは主人公の一人春日光三の言動が忘れられない。
  確かにあれは強烈だったにゃあ。
  「シルバー仮面」の初期は父が残した光子ロケットのエンジンをめぐる宇宙人と主人公の春日兄弟との戦いを描いている。
 光三はよくいえば血気盛ん、悪くいえば短気で思慮が足りないトラブルメーカーなんだ。
 彼のインパクトが強すぎてタイトルロールのシルバー仮面に変身する次男の春日光二や司令塔である長男の春日光一は影が薄い。
  妹はいつの間にかいにゃくにゃっちゃうしにゃ。
  いいのか、それで?
 第1話冒頭で早くもチグリス星人に家を破壊されてしまう春日一家。光三は人間に化けた宇宙人を見破ることができるサングラスで自分達を見張っているチグリス星人を見つける。
  喫茶店でコーヒーを飲んでたにゃ。
  光三は先手必勝とばかりコーヒーブレイク中のチグリス星人に殴りかかるが、チグリス星人は尻尾を出さず、被害者を装い続けたため、光三は警察に捕まってしまう。
 こういうとチグリス星人の卑劣な罠にはまった哀れな主人公みたいに見えるでしょ?
  実際そうにゃんだけど、宇宙人が人間に紛れて暗躍しているって妄想にとりつかれたトンデモさんにしか見えにゃい。
  チグリス星人役の俳優さんがいかにもする賢そうなのに殴られてる時だけ弱々しくて哀れっぽくなるのがいい。
 第7話では疑心暗鬼になった光三が武器の売買もしている叔父を宇宙人の手先と疑い、置き去りにしたり、プールに落ちても助けないなどひどい仕打ちをする。
  第1話でも焼け出された兄弟を心配して訪ねてきてくれたのに武器商人だからって罵詈雑言を浴びせていたにゃ。
  叔父さん、よく縁を切らないなぁ。
 第10話の「燃える地平線」では何故か宇宙人達は旧日本陸軍を連想させるコスチュームに身を包み、兄弟の父の研究所に絞首刑の死刑台を作っちゃう。
  何考えてんだろうにゃあ?
  こう書くと突拍子もない描写が続く変な番組だって思うかもしれないね。実際、ウチも何度か失笑しちゃったし。でも第9話の「見知らぬ町に追われて」はそんな印象を吹っ飛ばすハードな快作。
 宇宙人は春日兄弟に化け、マシンガンを手に市民の殺害をくり広げる。
  警察に春日兄弟を始末させるためだにゃ。
 九 警察と宇宙人から逃げ回っていては未来は無いと決心した春日兄弟は自らの手で宇宙人達を倒し、潔白を証明する。ニセ春日兄弟は合体し、宇宙人の本性を現す。
 ウチはニセ春日兄弟を倒した時点で物語は終ったんだから、シルバー仮面と宇宙人のバトルは蛇足か、子供向けのサービスかと思っていたら思わぬ結末が待っていた。
 本物の春日兄弟を追っていた警部は宇宙人を目撃し、自分もそれが真実だと認めておきながら、大衆は信じないだろうと言って事件を同じ人間の仕業として報告する。
  倒された宇宙人、身体から火花をあげていたけど、完全に消滅したようには見えにゃかったにゃ。
  うん。完全に燃えてしまったとしてのも燃えカスを分析すれば宇宙人だと証明できたかもしれないね。でもあの警部はそんな事しないだろうね。人は信じたいものを信じる。宇宙人の存在を公表したために起こる軋轢よりも、隠蔽で得られる安寧の方を選んだんだ。
  おかげで春日一家は彼らだけで戦い続けにゃければにゃらないにゃ。
  シルバー仮面が手近にあった卒塔婆で宇宙人を攻撃するシーンばかりが話題になってるし、そのシーンじゃウチも笑っちゃったけど、主人公以外の人達、普通の人達に向けられた冷徹な視線の方も話題にすべきじゃないかな?
 確かに「シルバー仮面」にはいたらない点が多く、傑作とはいえない。でも第9話は高く評価していいと思うよ。
  ふり返ってみると没後10年の実相時昭雄をしのぶ夜というよりは特撮の闇をのぞく夜みたいだにゃあ。




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tag : 実相時昭雄 セブン 成田亨 円谷プロ 第12話 封印 怪奇大作戦 シルバー仮面

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