怪獣よりも危険な「シン・ゴジラ」!? 2016年のベスト&ワースト

 九条小夜子(以下九) 今年も残すところわずかとなりました。
 豊橋ミケ(以下猫) もうわずかっていうレベルじゃにゃいにゃ! あと数分で2017年にゃ!
  それでもまだ2016年だからウチは間違った事いってないよ。
  小夜ちゃん、落ち着きすぎにゃ!
  何いってんの、ミケ。慌てたらミスを招いて時間をロスしちゃうじゃない。こういう時こそ落ち着かなきゃだよ。
  そういう事じゃにゃいにゃ!
  というわけで毎年恒例のベスト&ワースト、始まりまーす。
  はぁはぁ、まずはワースト10からにゃ。


 1 インデペンデンス・デイ:リサージェンス
 2 Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
 3 超高速! 参勤交代リターンズ
 4 仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー
 5 バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生
 6 10 クローバーフィールド・レーン
 7 X-MEN アポカリプス
 8 アズミ・ハルコは行方不明
 9 ファインディング・ドリー
 10 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ

 スーパーヒーローものが多いにゃあ……。
  確かにその通りだけど、ウチは決してスーパーヒーローものが嫌いなわけじゃないよ。むしろその逆で好きだよ。これはいわゆる愛の鞭ってやつね!
  でも9位の「ファインディング・ドリー」や10位の「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」は面白かったじゃにゃいか。
  ウチもそう思うよ。「ファインディング・ドリー」はピクサーが志を失ったんじゃないかって気がしたから。
  志?
  これは第一作の「トイ・ストーリー」の頃からいわれている事だけどピクサーの映画って作り手の事情を反映しているのね。前作の「ファインディング・ニモ」は子離れの話だったし。「モンスターズ・インク」は子供とどう向き合うか、その困惑をサリーとマイクに託して描いていた。でも「ファインディング・ドリー」にはそういたものは見られない。面白かったけどただのドタバタになっていた。だから苦言を呈するつもりであえてワーストに入れたんだ。
 「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」をワーストに入れたのも同じような理由。スーパーヒーローは政府の監視下に置かれるべきかというテーマをめぐる葛藤が話の核だったのに後半は復讐劇にスライドしてしまい、前述のテーマをうやむやにしてしまった。難しいとは思うし、正解なんてないのかもしれない。それでもウチは作り手側の考えた答えを知りたかった。
  「X-MEN アポカリプス」もそうにゃの?
  そうだね。ストーリーにひねりがなくて単調だったり、マグニートーの怒りがあれで鎮まるのか疑問だった事も大きいけど何より今までの「X-MEN」は差別をめぐる物語だったのに「アポカリプス」は強大な敵を倒すだけの話でしかなかった。これがワースト入りの一番の理由だね。家族を奪われたマグニートーの心情を丁寧に描いていればワーストには入れなかったと思う。
  にゃるほど。ワーストというよりは“もっと頑張りましょう”だにゃ。
  「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」と「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」は別だよ。この二作は本当にひどかった。
  「仮面ライダー平成ジェネレーションズ」は脚本がメチャクチャすぎたもんにゃあ。
  ゴーストが再び変身できるようになるくだりなんかホント強引だったね。
 鎧武が来るまで泊進ノ介が変身できない等レジェンドライダーに気を配っていたのには好感が持てるけど、その配慮を敵キャラにも向けてほしかった。
  何でパックマンにゃのか、何で清宮が狙われたのか全くわかんにゃいもんにゃあ。
  「ピクセル」のパクリ?
 「バットマン対スーパーマン」も脚本がひどかった。
  レックス・ルーサー、何考えてるのかわからにゃいにゃあ。
  コンプレックスがあるのはわかるんだけどね……。宇宙からの敵を示唆するシーンがあるけど、「アベンジャーズ」が第一作でやった事をもったいぶってやられてもね……。
 原作コミックを知らないとわからないシーンが多く、「マン・オブ・スティール」を観ただけじゃ完全に理解することはできない。正直、アメコミが普及しているとはいえない日本じゃ敷居の高い映画だと思う。
何でそんなシーンが多いのかっていうとおそらく続編への伏線だと思う。でも伏線が多すぎて本筋の理解を妨げているのは問題だよ。
 「ウルトラマンタロウ」や「ガメラ3 邪神覚醒」と同じくスーパーヒーローの戦いに巻き込まれた一般市民の被害って問題を取り入れた点は評価するけど、活かし切れていない。
  市民の反応ってクライマックスには関係にゃいもんにゃあ。
  その点もマイナスだね。
 6位の「10 クローバーフィールド・レーン」はにもいったけど、宣伝が映画自体を台なしにした前代未聞のケース。
  映画ファンにゃらタイトルの時点でおやっ? と思ったろうにゃ。
  それでもあの予告とポスターはないよ。サスペンスも何もあったもんじゃない。
 8位の「アズミ・ハルコは行方不明」は逆ミソジニー映画。オチのつけ方もそれでいいの?  って思っちゃう。
  地方の現実を容赦なく描いた点はいいと思うにゃ。
  3位の「超高速! 参勤交代リターンズ」は変に深刻にしちゃって前作の味を殺してしまった。
  駄目にゃテコ入れの典型だにゃ。
  今回ワースト10には入れなかったけど「グランドイリュージョン2 見破られたトリック」も前作の味を壊していた。
 第2位の「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」は肝心の事件がしょぼくて、とてもホームズが手こずる事件とは思えない。それに日本の描写が微妙なうえに無くてもストーリーが成り立ってしまう。
  栄えある第1位「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」は内容ゼロ、誰もが認める駄作だにゃ。
  前作は初めての宇宙人による侵略ってことで描写にインパクトがあったけど、「リサージェンス」では宇宙人の存在は既知のものとなっている。なのに前作の拡大再生産みたいな描写なのでインパクトは無し! 「映画秘宝」のトホホの上位に入るんじゃないかな。
 さて次はベスト10の発表だよ。


 1 残穢 住んではいけない部屋
 2 シン・ゴジラ
 3 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
 4 ナイトクローラー
 5 PK
 6 野火
 7 機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY
 8 日本で一番悪いヤツら
 9 64 ロクヨン 前後編
 10 ウォークラフト

  あれ、「シン・ゴジラ」が1位じゃにゃいんだ?
  でも2位だよ。決して低く評価しているわけじゃない。
 観る前はツイッターに書いた通りの不安を抱えていた。


  一般市民の視点が抜け落ちているってとこは当たってたにゃ。
  だけど「シン・ゴジラ」の場合は欠点にはなっていない。04年の「ゴジラファイナルウォーズ」で核をいい換えていたから心配していたけど、杞憂どころかむしろ核を前面に押し出していた。
  どう見ても今度のゴジラは東日本大震災や福島第一原発事故をモチーフにしてるもんにゃあ。
  だからといって反原発映画かというとそうとはいえない。もしそうならゴジラがまき散らした放射性物質の半減期がわずか数か月なんて描写はしないはずだからね。
  そういえば放射線が出ている事は描写されているけど被爆の描写は無かったにゃあ。
  核に限らずあらゆる論点に対し「シン・ゴジラ」は神経質なくらい中立であろうと努めている。
 前半部は日本の安全保障の問題点を浮き彫りにしていて緊急事態条項は必要という人達を喜ばせていたけど、第四形態になったゴジラに対し自衛隊は無力だった。それ以上に問題視すべきな事にアメリカは日本政府に何の相談も無く爆撃機を飛ばすわ、東京を核攻撃しようとするわで、アメリカの前には日本政府の意思なんて無いも同然だよ。「シン・ゴジラ」の日本はパートナーではなく属国として描かれているんだ。その事に気づいている人って結構少ないのかも知れないね。
 既に多くの人が指摘している事だけど「シン・ゴジラ」は前半と後半で大きく異なる。その境界線といえるシーンある。
 米軍の攻撃で初めてゴジラがダメージを受ける。それに応じてようやく熱線を放つんだ。ちょっと話はそれるけどなかなか熱線を出さないから「シン・ゴジラ」のゴジラは熱線を出さないのかって不安になってたんだ。
  超巨大とはいえ生物だもんにゃ。
  そう。だからリアルを追求した結果熱線はオミットってありうるとそれまで思ってたんだよ。
 この熱線、待たされた甲斐がある斬新なものだった。
 吐くまでのプロセスや収束してレーザーのようになるあたり「ナウシカ」の巨神兵を思わせるね。
  背中や尻尾からも出るのは「シン・ゴジラ」のオリジナルにゃ。
  熱線が避難のために首相をはじめとする閣僚全員を乗せていたヘリコプターを直撃し、内閣は全滅。その結果、内閣は刷新され、主人公矢口蘭堂の権限が拡大し、事を進め易くなった。
 これも多くの人が指摘している事だけど同じ乗り物に内閣全員が乗るなんて事は起こりえない。映画のような事態を避けるために分散させるものなんだ。
 内閣が健在じゃ矢口蘭堂は思うように動けない。だからリアルじゃないとわかったうえでこのような展開にしたんだと思う。
 前半の内閣が日本の現状をリアルに反映させたものなら、後半の内閣は理想に近い日本といえる。
  でもそれって裏を返せばありえにゃいってことじゃにゃいの?
  そう! 先もいった通り内閣全員が同じ乗り物に乗るなんてことはありないのだから迅速に行動する政府も嘘ってことになる。
 「シン・ゴジラ」が抱えるこの問題に対し一番厳しいのは「Real Sound」の宮台真司のコラムだと思う。そして「現代ビジネス」の辻田真佐憲の「シン・ゴジラ」評
「挙国一致し世界に実力を見せつける日本というのもまた虚構なのではないか。願望の発露といってもよい。それゆえ、本作の内容を正確に反映するならば、『願望(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。』とでもいうべきであろう」と的確な指摘をしている。
 正直、庵野監督の意図はわからない。
  興業的成功を狙った可能性もあるにゃ。
  でもゴジラが熱線を放って内閣を全滅させた瞬間に映画は「現実(ニッポン)」対虚構(ゴジラ)」から「願望(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」にシフトしたのだけは確か。
 興行収入を考えればこの変化は正しかったんだと思う。
 最近、日本スゴイって内容の書籍や番組がヒットしているけど、それって日本人が自信を無くしている事の反証だよね。「シン・ゴジラ」の後半はリアルな対怪獣シミュレーションから自信を喪失した日本人を慰撫するものへと変わった。だからこそ大ヒットしたんだ。
  それっていけにゃい事にゃの?
  声高に非難される事ではないだろうね。でもいい事でもない。ウチが挙げた「シン・ゴジラ」論はどちらもその点を問題視している。いや、宮台真司は危険視していて、その理由にはウチも一理あると思う。
 ウチは徹頭徹尾リアルな対ゴジラ映画を観たかった。そんな映画だったらヒットしなかったかもしれないけど。
 こうした理由で第1位ではなく第2位になったんだ。瑕疵があるとはいえそれでも第2位なんだから否定しているわけじゃないんだよ。
 「シン・ゴジラ」を抑えて第1位に輝いたのは「残穢 住んではいけない部屋」。怪現象の原因をつきとめるミステリー的な筋運びのホラー映画だけど、同時に日本の都市論にもなっているのが凄い。
 第3位の「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」については「20世紀の魔女狩り」で、第10位の「ウォークラフト」は「ダンカン・ジョーンズのオーク革命」で取り上げたので割愛するね。
  「ウォークラフト」も完結してにゃいけど「バットマンVSスーパーマン」よりはマシにゃ。
  第4位の「ナイトクローラー」はスクープ映像を追うビデオジャーナリストを通じて現代メディアの病理を描いたピカレスクロマン。
  以外にゃのはインド映画の「PK」がランクインしてる点だにゃ。
  インド映画の御多分に漏れず上映時間は長かったけど、それを感じさせなかった。何より宗教否定ともいえる展開をよくインドでやれたなって思う。
 主人公PKは実は宇宙人。彼は地球に来て早々、宇宙船のコントロール装置を盗まれてしまった。コントロール装置を探すうちに彼はいろいろな宗教に出会い、信者の話を聞くうちに神様を見つけて、彼に相談すればコントローる装置を取り戻せると思い込む。PKの信仰心皆無の神様探しはやがて宗教の矛盾を指摘する運動に発展するんだよ。観ていてワクワクしたね。
 第6位の「野火」は大岡正平の小説を塚本晋也が映画化。去年の公開作品だけどウチが観たのは今年だったので。戦場の理不尽に追い詰められた男達の狂気に圧倒されたよ。お勧めを超えて必見の一本だね。
  「ナイトクローラー」も去年の映画だにゃ。
  うん、去年の映画だった、観なかったのは迂闊だったよ。
 第7位は「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」も戦場の狂気を描いたアニメだった。元は一話15分のネット配信アニメで、全4話。それを劇場用に再編集したもの。正直、そんな尺であの原作を描けるのか不安だったんだけど、観たらびっくり。原作以上の出来栄えだった。
 ラスト、サイコザクを失ったダリル・ローレンツがゲルググに乗って戦うというアニメオリジナルのシーンがある。サイコミュで自分の手足のように動かせるサイコザクの後に非サイコミュ機のゲルググに乗るダリルの表情は見もの。このシーンを加えたことで深みを増している。
 第8位は北海道県警の不祥事を描いた「日本で一番悪いヤツら」。実録物の傑作だよ。
本来は一つの作品として扱うべきではないんだろうけど第9位の「64 ロクヨン」は二つで一つの作品なので二つ合わせてのランクイン。骨太なストーリーがいい。
  ベストは邦画が6本を占めているにゃ。
  ウチらのベストに限らず今年は邦画が豊作だった。来年は新年早々「ドント・ブリーズ」「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」といった面白そうな映画が上映されるし、「スターウォーズ」のエピソード8や「メッセージ」、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、「哭声 コクソン」などが控えているから洋画の巻き返しがあるかもね。
  楽しみだにゃ。
  今年はあんまり更新できなかったね。
  東京国際映画祭が遅れに遅れたのは毎年の事だけどにゃ。
  今年はやらないかも。
  堕落したにゃあ。
  決めた、それにしよう。
  え?
  来年の抱負だよ。
  更新を増やすのかにゃ?
  いや、東京国際映画祭のを年内にやる!
  駄目にゃん!
  何はともあれ後数分で2017年。
  今年は散々だったからにゃあ、来年はいい年であってほしいにゃ。
  本当だね。
 & それでは皆様、よいお年を。


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tag : ゴジラ 映画 作品 2016

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