軍用ドローンがもたらす矛盾した気持ち 「ドローン・オブ・ウォー」

 豊橋ミケ(以下猫) 見て見て、小夜ちゃん。広告が出てるにゃ。
 九条小夜子(以下九) 残念だなー、広告が出ないの唯一の取柄だったのに……。
  それ、自虐しすぎにゃ……。
  それも今日で終り! 24日に池袋の文芸坐「ドローン・オブ・ウォー」って映画を観たんだよね。
 
  これ、去年の秋頃に公開された映画だにゃ。
  そうそう。TOHOシネマズでやるって聞いたんで、観に行こうって思って上映時間を調べたらもう終わってた。
  上映期間、短かかったみたいだにゃ。
  TOHOシネマズとはいえ東京じゃ新宿と六本木のみ。ミニシアター並の小規模公開だったみたい。
  小夜ちゃん、「プリディスティネーション」の時もそんにゃ事いってにゃかったっけ?
  うん、あれも観に行こうと思ったらもう終わってて、文芸坐での上映で観たんだ。
  そっちにもイーサン・ホークが出てたにゃ。
  出てるも何も主役だよ。イーサン・ホークとは縁が無いってわけじゃないんだけどなぁ。
  小夜ちゃんと縁が無いといえば「競輪上人行状記」だにゃ。
  文芸坐で何度も上映してるのに都合が合わなかったり、急用ができたりで観に行けないんだよね。これって運命?
  いいかげんDVD借りるか買うかするにゃ。
  そこまでして観たくはない。
 「プリディスティネーション」と一緒に観た「ランダム 存在の確率」はSFマインドに溢れた隠れた名作だったね。

 ミラー彗星が飛来する夜、8名の男女がホームパーティのために集まる。停電が起きて、様子を見に外へ出ると一件だけあかりのついた家があった。その家は8人がホームパーティをやっている家にそっくりだった。
 似てるのは家だけじゃなかった。その家にいる人間達もそっくりだった。
  でも微妙な違いがあるんだにゃ。
  そう、それがこの映画のキモなんだよね。
 やがて彗星の影響で並行世界とつながってしまったのではないか、あの家とその住人達は別世界の自分達なのではないかって説が出てくる。
  はっきりとした証拠を出さないのがうまいにゃ。
  ここでミケがいった微妙な違いが活きてくる。
  停電の混乱で別世界の人間が紛れ込んでくるんだけど、周りの人間どころか当の本人も気づいていにゃいんだよにゃ。
  異世界に行った事に気づかないってのは相当珍しい。やがて目の前にいる人間は本当に自分の知っているあの人なのかという疑問だけでなく、今いる世界は自分の知っている世界なのかという疑問まで生じてしまう。
 発端となるアイデア自体はSF業界では珍しいものではないけど、それを哲学的な物語に発展させているのは凄い。
 一般受けしないのは仕方ないとはいえもっと知られてしい名作SF映画だよ。

  小夜ちゃん、今回は「ドローン・オブ・ウォー」の話だにゃ。
  あっ、そうだった。
 この映画、タイトル通り軍用ドローンによる戦争をイーサン・ホーク演じるイーガン少佐を通して描いたもの。
  面白かった?
  正直にいうとつまんない。短期間で上映終了なのも納得の内容だった。
 だってイーガン少佐って屋内で座って計器をいじってるだけなんだもん。これじゃあ盛り上がるはずがないよ。
  えーっ、じゃ何でブログで取り上げるんだにゃ?
  面白くはないけど駄作ではない。考えさせられるところがたくさんあったからよ。

 イーガン少佐の任務は上からの指示通りにドローンを操縦し、ミサイルを撃ってアフガニスタンに潜むイスラム原理主義テロリストを“排除”すること。
 ドローンの操縦は衛星回線を通じてラスベガス近くの空軍基地から行う。
  それにゃら反撃される心配はにゃいにゃ。
  安全だと思う? 確かに身体は無事だけど心はそうはいかない。
 例えば標的の近くを偶然民間人が通りかかる。このままでは民間人も危ないけどミサイルはもう発射した後で、途中で爆破させることもできない。結局民間人はミサイルの爆発に巻き込まれて死んでしまった。
 またある時は歩兵達から見張りを頼まれる。
  そんにゃ事もするのか。
  そのためにドローンを飛ばしたわけじゃなくて、たまたま上空を飛んでいたら頼まれたんだけどね。
 敵の姿は無く、このまま何事もなく終わると思った瞬間、彼らは地雷を踏んでしまう。あ、字幕では地雷ではなく、速成爆弾っていってた。
 遠く離れた場所のイーガン達にはアフガンの米軍司令部に連絡する以外何もできない。結局イーガン達が見ている前で歩兵達は皆死んでしまった。
 死の恐怖からは逃れられたけど良心の呵責は変わらないし、安全になったが故の負い目を背負うことになった。
 かつてF-16に乗っていたイーガン少佐はもう一度空を飛びたいと願う。でもドローンの活躍で戦闘機パイロットの出番はどんどんなくなっている。実際、イーガン少佐の部隊でパイロットだったのは彼一人なんだ。
 こうした出来事が積み重なり、イーガン少佐は鬱憤をため込んでいく。それは彼の家庭に亀裂を作ってしまった。
  差し引きゼロだにゃ。
  だからってドローンを放棄して戦場に生身の人間を送るのがいいとはいえない。アメリカ空軍だけとはいえ死傷者が減るのは否定できないからね。
  でもそれって卑怯にゃんじゃ……。
  悪いけど正々堂々と戦ったっていうのは自己満足だよ。正々堂々と戦ってたくさんの戦死者を出す指導者と卑怯でも戦死者を低く抑えた指導者。どっちがいいと思う? それに生身の人間を戦場に送ったとしても民間人を巻き込む事は変わらない。それどころかドローンによる攻撃は第二次世界大戦やベトナム戦争で行った爆撃と比べれば民間人の死者は少ないんだ。もっともこれはドローンというよりは電子機器や爆弾の進歩によるものだけど。技術の発展によっては今よりももっと低くできるかもしれない。
  小夜ちゃんはドローンに賛成にゃの?
  YESかNOかはっきりしろといわれると正直苦しい。というより抵抗がある。ドローンに利点がある事は認めるけど、その登場を歓迎する気にはなれないんだ。
 でもドローンが嫌だからってパイロットに撃墜されて死ぬリスクを負えとはいえない。
  歯切れが悪いにゃあ。
  強いていえば消極的賛成かな。
 ドローンの操縦はコースから攻撃のタイミングまでCIAや上官の指示に従って行う。その姿はパイロットというよりはオペレーターと呼ぶ方が相応しい。
  かつてはパイロットだったイーガンには苦痛だろうにゃあ。
  もっとも生身の兵士だって似たようなもんじゃない? イーガン少佐だって自分で決めたコースじゃなく、上から指示されたコースを飛んでいたんだろうし。
 そんな憂さを晴らすかのようにラスト、イーガン少佐は独断でアジトの世話をしている女性をレイプをくり返していたテロリストを攻撃する。そこで映画は終わるけど、何らかの処分は免れないだろうね。
  何でそんにゃ事したのかにゃあ?
  作戦行動中のイーガン少佐達は自分で判断する事は許されず、ドローンというシステムの一部になっていた。イーガン少佐はそれに反発したんじゃないかな。
 でも軍隊って元々そういうものじゃない? キューブリックの「フルメタルジャケット」の前半は鬼軍曹に罵倒されながらの訓練だった。軍隊は命令には絶対服従でないといけない。その事を骨身にしみてわからせるには強い我や個性は邪魔になる。だから最初の段階でそれをつぶしておくんだ。
  へ?
  究極の軍隊ってさ、ドローンだけで構成されたものなんじゃない? つまり兵士一人一人の考えなんてものは邪魔なんだよ。
  何も考えずただ上の命令に従っていればいいって事?
  それが理想の兵隊じゃないの?

 「ドローン・オブ・ウォー」を観て思ったのは結局何も変わらないって事なんだ。少なくとも民間人にとってはね。
  まきぞえで殺されるアフガンの民間人にとっては人間であろうとドローンであろうと関係にゃいもんにゃあ。
  アフガンの人達に限った話じゃないよ。ドローンでも兵士の心は傷つく。その影響は兵士の家族に及ぶんだ。
  それってドローンが出てくる前からある話だにゃ。
  でしょ? 観る前はもっと明確な違いがあるか、今はよくても将来とんでもない問題を起こす。それが明示か暗示、いずれかの形で示されるものと期待していたんだ。
  違ったにゃ。
  うん。ドローンは死傷者の数を減らす。否定するようで抵抗があるけど、それって程度の問題に過ぎないんじゃないかって思う。
  程度? 安全確保のためにどんだけの人が苦労してると思ってるんだにゃ?
  だからドローンを無駄とかいうつもりはないんだよ。自動化の波は軍隊であろうと避けて通れない。
 ドローンの軍事利用ってさ、ウチらが日頃意識しない軍隊の本質を浮き彫りにしたんじゃないかって思う。
  軍隊ではドローンも生身の兵士も同じ歯車に過ぎないってヤツ?
  そう。
  「ドローン・オブ・ウォー」はドローンに関わる人達の日常を通じて軍隊の本質を教えてくれたんだにゃあ。
  うん。でもつまんないけどね。
  そのまとめ方はにゃいだろ!!


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tag : 文芸坐 「ドローン・オブ・ウォー」 ドローン 軍隊

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