石油をめぐるジョシュ・ティッケルの試行錯誤 「FUEL」

 九条小夜子(以下九) 「松嶋×町山の日本未公開映画を観るTV」でやってた「FUEL」はジョシュ・ティッケルが石油に代わる燃料を模索する映画だった。
 大学時代、環境学を学んだティッケルは研究のためにヨーロッパに渡った。そこで農家がナタネから作ったバイオディーゼル燃料でトラクターを動かしているのを見て以来、彼はアメリカにも普及させようと研究に取り組む。


 豊橋ミケ(以下猫) アメリカが石油に依存しているのは言うまでもにゃい事にゃ。中でも依存度が高いのがルイジアナ州だにゃ。
  ルイジアナ州では石油精製工場から出る排ガスや排水等で環境汚染が起きているけど、石油産業がなくなったら経済が成り立たないから州は厳しく取り締まることができないでいる。
 ハリケーンカトリーナがルイジアナ州を襲った時、石油精製工場等から大量の石油が流出したけど、その事は殆ど報じられなかった。
  管理責任を問われるどころか石油会社は政府から補償金を受け取っているにゃ。
  ルイジアナ州だけじゃない。石油産業に頭が上がらないのは合衆国政府も同じ。
  アメリカ政府には石油産業の息のかかった政治家が何人もいるにゃ。
  ブッシュ政権がいい例よね。
 ジョシュ・ティッケルじゃなくてもこのままじゃまずいって思うよね。


 話をバイオディーゼルに戻すね。ディーゼルエンジンはガソリンの代わりに軽油を使ってるけど、実は燃料は軽油じゃなくてもいいの。手を加えなくてもバイオディーゼル燃料を使えるの。
  移行費用がかからないって点がミソだにゃ。
  映画では車だけじゃなく、船もバイオディーゼルで動かせるっていってた。
  飛行機は?
  う~ん、どうだろう。プロペラ機なら可能性はあると思うけど。
  そういえば松本零士の漫画で第二次大戦期の戦闘機をスコッチで飛ばす話があったにゃ。あれ、何て漫画だったかにゃあ。
  ……可能性だけならあると思うけど。とはいえジェット機は無理でしょうね。
 このように用途の広い植物油由来のバイオディーゼル燃料だけど、燃料として使うにはコストが高い。そこでティッケルは揚げものに使った油に着目。映画ではこれを廃食油っていってる。ファストフード店から使用済みの油をもらい、それにアルコールと苛性ソーダを混ぜて燃料を作った。こうして作った廃食油は有毒物質の硫黄酸化物を殆ど含まず、黒煙は半分から3分の1まで減ってる。だからDPF(粉塵除去装置) を付けなくてもいいの。
 燃費や走行性は軽油と同じなだけでなく、混ぜても大丈夫なんだって。
  いい事ばっかりにゃ。
  ところがそうでもないのよ。
 ティッケル自ら廃食油で走るベジーバンに乗って全米を回り、PRに努めた。その甲斐あって有名人の支援を受け、バイオディーゼル燃料を専門に扱う会社もできた。
  大成功じゃにゃいか。
  ところがバイオ燃料は森林破壊をもたらすという報道でケチがつき、全ては水の泡。
  それどういう事?
  ほら、ブッシュ政権の時、トウモロコシから作るエタノールを普及させようとして失敗した事があったじゃない?
  ああ、値上がりしたので発展途上国の貧しい人が買えにゃくなったり、飼料として使っていた酪農業者が苦労したにゃ。
  それだけじゃないよ。トウモロコシの栽培に使う肥料は石油から作っているの。
  じゃあ間接的に石油を燃料にしているようなもんだにゃ。
  天候だけじゃなく、原油価格の上下にも左右されるから不安定だよね。
 それ以外にもバイオディーゼル燃料はエンジントラブルを招くって指摘もあるの。
  これは軽油にバイオディーゼル燃料を混ぜた場合だにゃ。ティッケルが推奨している100%植物由来のバイオディーゼル燃料にあてはめるのはどうかにゃ?
  ミケのいう通りかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 天候や原油価格、エンジントラブルの問題は技術の進歩で何とかできるかもしれないけど、どうしても解決できない問題があるのよ(下を指さす)。
  ?
  土地よ。ブラジルでは大豆畑を作るために熱帯雨林が破壊されてるの。
  あー、石油依存問題は解決できても環境問題は解決できにゃいにゃー。
  背に腹は代えられないからね。石油が枯渇したらますます森林破壊は進むよ。今はいいけど将来を考えたらまずいと思う。
 それに燃料の事ばかりいってきたけど、石油から得られるのは燃料だけじゃない。プラスチックや化学薬品の一部も石油から作られる。
  大豆やトウモロコシにはそこまで期待できにゃいにゃ。


 結局石油から離れられにゃいのかにゃ。
  ウチもそう思ったし、ティッケル自身落ち込んでた時期があったみたい。でも意外な代替燃料源が登場するの。
 それが藻!
  藻?
  そう。アメリカのソラジン社や日本のデンソーが研究を進めているんだけど、原油と似た成分の油脂を生産する藻があるのよ。この藻から取り出した油脂を濃縮して燃料にするんだけど、燃料以外にも使えるのがこの油脂の凄いところ。映画では住居用洗剤、化学薬品、プラスチック、ジェット燃料を挙げてたよ。
  おーっ。でも藻を培養するにも土地がいるにゃ。
  それは当然。でも映画ではソノラ砂漠の15%の面積で全米のエネルギーが賄えるそうよ。ちなみにソノラ砂漠の面積は311000平方キロだから、その15%となると46650平方キロ……北海道の半分程度ね。
  それ凄い面積だにゃ。
  日本で考えるならね。でも世界規模、いや、全米規模で考えれば用意できない面積じゃないと思う。
 それに一か所で46650平方キロってわけじゃない。トータルで46650平方キロあればいいんだから、例えば燃料会社は水槽と藻をセットにした栽培キットを各家庭に預け、そこで藻を育ててもらい、それを集めるってやり方もありだと思う。勿論その数は4000万戸以上かかるだろうけど副業として成り立つようにすれば無理な話じゃない。
  にゃるほど。それにゃら日本でもできるにゃ。
  学校のプールなんか冬は使わないんだから、それで藻を育てるってのもありだよね。
  土地はいいとして、その藻、安全にゃの?
  映画ではティッケル本人が濃縮した藻を舐めてピーナッツ油に似ていると言っていたから微量なら人体に害は無いみたい。けど環境に与える影響は未知数だから喜ぶのはまだ早いね。
将来石油をクリーンに使える技術ができるかもしれない。けど、石油は有限。人間の手で作ることはできない。いつかは必ず枯渇する。エコという観点だけでなく、代替燃料を探る事は必要だよね。
  頑張れジョシュ・ティッケル!
  期待されるのはジョシュ・ティッケルや科学者だけじゃない。映画は終盤にガンジーの「人民が先に進み、指導者が続く」という言葉を引用した。最終的にはウチら一人一人の問題なんだね。
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テーマ : ドキュメンタリー
ジャンル : 日記

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