無神経な人選 「松嶋×町山未公開映画祭」ライナーノーツ

 九条小夜子(以下九) 既に皆さんご存じと思いますが、ウチらのブログでも何度か取り上げている「松嶋×町山 日本未公開映画を観るTV」で紹介した39本のドキュメンタリーがネット配信で観られるようになりました。
 豊橋ミケ(以下猫) 期間限定だけどにゃ。
  東京MXテレビって結構電波が入らない所が多いんだよね。だから勧めても「うち、映らないんだ」って言われる事の方が多かった。期間限定とはいえネットなら機材さえ揃っていればどこでも観られるから、東京のミニシアターでひっそり公開するよりはいいかもよ。
  ネット配信にともにゃい39作品それぞれに著名人によるライナーノーツがつくにゃ。
  混同しないでほしいんだけど、ウチらが問題視しているのはライナーノーツであって、「未公開映画祭」や配信される映画じゃないの。後者にはむしろよくやってくれたと感謝しているくらい。
  本題に入るにゃ。ライナーノーツの執筆陣にあの後藤啓二がいたんだにゃ。
  彼が担当したのはアメリカで児童への性的虐待をくり返していた神父をカトリック教会が庇っていた事件を追った「フロム・イーブル バチカンを震撼させた悪魔の神父」
  後藤啓二が書くというだけで嫌にゃ予感がしたけど的中したにゃ。
  最後にこんな事を書いている。



 わが国は、国際社会からの批判を浴びながらも、いつまでたっても児童ポルノの単純所持を法律で禁止しようとせず、子どもを性の対象とすることを容認する社会である。子どもに対する性的虐待についても、「臭いものにふた」的な考えで、正面から対策を講じているとは言い難い。性的虐待はカトリック教会のみでなされているわけではない。わが国のいたるところで行われており、われわれはカトリック教会を偉そうに責めることができる立場にはない。本映画を見て、わが国を含め全世界の一人でも多くの人々が、子どもを守るための取組に立ちあがることを期待したい。


  「未公開映画祭」しか見てない人は文面通りに受け取っちゃうだろうにゃ。
  でもこの部分には裏がある。
 「わが国は、国際社会からの批判を浴びながら」なんて書いてるけど、何で批判されてるかといえば規制推進派が外圧を生むために情報操作してるからなんだよ。
 例えばコンテンツ文化研究会の「調査報告:日本の漫画やアニメが、海外から「児童ポルノ大国」として批判を受けているという構図はいかにして作られたか?」に詳しく書かれているけど、後藤啓二が顧問を務めているECPAT/ストップ子ども買春の会は国際会議に「オタクはアニメや漫画、コンピューターやオンラインのゲームに夢中になっていますが、その中には、児童ポルノ的な表現が含まれている場合があります。二年ほど前、日本のマスメディアはこれらの動きを取り上げました。それ以来、より多くの人々がこういった喫茶やオタク文化に関わるようになってきています。このことは、児童も含む多くの人々がオタク文化を通じて自然に児童ポルノ的な画像を見始めていることを意味します。」とか「『萌え』という用語は、経済分析のために中立不偏の感覚で使われます。しかし、それは文字通り、コンピューターゲーム、アニメとマンガの一部のファンに対し、女児のキャラクター(美少女キャラ)の性倒錯的な魅力を与える事を意味します。萌えWebページは、時々、物語やチャットの中で未成年のキャラクターが性的暴行、空想と虐待の対象となっている映像を含んでいる他のページにリンクします。」とか書かれたレポートを提出している。
 批判しているのはそれを真に受けた外国人なのよ。
  ひどいにゃ~。オタクを児童虐待予備軍にしてるにゃ。
  ちなみにECPAT/ストップ子ども買春の会の代表は日本キリスト教婦人矯風会の幹事である宮本潤子と日本キリスト教団まぶね教会牧師の中原眞澄。キリスト教の影響が強い団体なのよ。
 くり返すけど後藤啓二はこのECPAT/ストップ子ども買春の会の顧問なのよ。海外への情報操作に彼が関与しているという証拠はない。でもボーイ0さんが「LOVE&PEACE 3月26日 外務省 児童の権利条約に関するシンポジウム~今後の課題~に参加してきました」で報告しているように彼は自分の主張に外圧を利用している。
 それがなかったとしても無罪じゃないよ。だってECPAT/ストップ子ども買春の会が間違った情報を海外に流すのを見て見ぬふりをしていた事になるんだから。
 そんな人に「本映画で明らかになったのは、それと同等に許せないカトリック教会の対応である。神父による性的虐待を知りながら、自らの保身のためか、カトリック教会の「権威」を守るためか、隠ぺいし、うそをつき、被害者の訴えを門前払いにし続けてきたカトリック教会は誠に許しがたい。」などといってほしくない。

 もし、後藤啓二が主張するように単純所持を禁止したらどうなると思う?
  確実に冤罪が増えるにゃ。
  アメリカではコンピューターウィルスがダウンロードした児童ポルノのせいで危うく有罪にされかけるという事件が起きたし、イギリスではもっと恐ろしい事件が起きた。
 中学校に務めるニール・ウェイナーは上司のエディ・トンプソンに不満を持ち、彼をクビにしようと企んだ。ニールはエディのノートパソコンに児童ポルノをダウンロードし、警察に通報したのよ。エディは逮捕された。2007年、警察はニールの狂言だった事を見抜き、彼を逮捕した。これでエディの疑いは晴れたけど事件が起こったのは2006年。その間、彼とその家族は友人を失い、嫌がらせを受けたのよ。
 単純所持禁止にはこんな危険性があるの。
 それに後藤啓二が見習うべきといっている外国はポルノ規制が日本よりも厳しいを禁じているのに性犯罪発生率は日本より高い国が多いのよSF作家の山本弘がわかりやすく解説しているけど、これってポルノ規制に防犯効果は無いって事じゃない。

 後藤啓二は東京都青少年問題協議会の一員でもある。
 東京都青少年問題協議会といえば「例えば村上春樹の『1Q84』、しばらく前に書いた『ノルウェイの森』、これはみんな女子高校生がセックスしているんですよ。それが事細かな描写で出てきています。でも、あれは文学で非常にいいんですよね。」とか「雑誌・図書業界の為にも、きちんとした規制をしてあげる事が、悪質な出版社が淘汰されていくという事にもなる。健全な出版社を生かす為に、どんどん悪質な物はペナルティーを科して消していくという仕組みが業界の為にも良い。」、「他の先進国には子供の人権に配慮した規制がある。日本だけが法整備を進めないというのは凄く不思議。漫画家団体に対して説明や調査データを示す必要も無いくらい規制は当たり前の事だ。正論でガンと言ってやれば良い。」、「性同一性障害と同じく持って生まれた嗜好だという事で、子供に対する性暴力漫画を好む人達を放免とするのであれば、彼らは認知障害を起こしているという見方を主流化する必要があるのではないか。」などの恐ろしい発言を乱発した事で有名よね。
  小夜ちゃん、ズルしちゃ駄目にゃ。例に挙げたのはどれも後藤啓二の発言じゃにゃいにゃ。
  確かに。でも後藤啓二がこういう発言をする人達と同じ思想を持っている事は事実。
 非実在青少年で話題になった東京都青少年健全育成条例改正案の作成にも後藤啓二は加わっている。
  非実在青少年って何? って人は「東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト」に詳細かつわかりやすい解説が載っているので、それを見てにゃ。
  一言でいえば架空のキャラクターのエロも規制しようって事。後藤啓二は「子どもを性の対象とすることを容認する社会である」といってるけど、決してそんな事はない。
 彼らの条例案が反対されたのは、恣意的な解釈を許すから、現行法で充分対応できるから、科学的根拠が無いから、都民に東京都に“協力する努力”と東京都の方針を無批判に受け入れる事を要求しているからよ。正しくは「実在しない子どもを性の対象とすることを容認する社会である」だよね。

 ライナーノーツを読んだ人は、後藤啓二がどんな人で2010年の春に何を推し進めようとしていたかを踏まえたうえで「ノット・レイテッド ~アメリカ映倫のウソを暴け!~」を観てほしい。
  井筒和幸のライナーノーツもよろしくにゃ。
  「シェルビーの性教育 ~避妊を学校で教えて~」もお勧めよ。
  でもさ、後藤啓二の件がなかったら、勧めたいのは「ビン・ラディンを探せ ~スパーロックがテロ最前線に突撃!~」「ステロイド合衆国 ~スポーツ大国の副作用~」だよにゃ。

 それにしても何だって後藤啓二にゃんかに頼んだのかにゃ。
  ウチの憶測になるけど、「フロウ ~水が大企業に独占される!~」のライナーノーツは猪瀬直樹副都知事なんだよね。そのツテじゃないかって思ってるんだけど……。
  猪瀬副都知事のライナーノーツはまっとうだから油断しちゃったにゃ。
  おそらく後藤啓二がどういう人か知らなかったんでしょうね。もし知ってて依頼したのなら映画の内容なんかどうでもいいって事だよね。
スポンサーサイト

テーマ : ドキュメンタリー
ジャンル : 日記

コメントの投稿

非公開コメント

No title

 この後藤啓二のライナーノーツで一番の問題は、「児童虐待の防止」と「児童ポルノの単純所持禁止」という「似て非なるもの」を混同してミスリードしてるということなのですよね。確かに虐待の産物としての児童ポルノは抑止するべきものですが、それは現行法をしっかり運用することで十分対応可能なものであることは警察や後藤の言とは違って、実際の多くの摘発事例からはっきりと示されており、そこに加えて単純所持禁止を法制化する動きは、弊害が多いだけでなく児童達すらも多大に抑圧する危険がある(例えば自分の水着写真を掲示しただけで罪に問われる、本人や家族が冤罪に巻き込まれる危険、被害者の居ない絵やアニメといった創作物まで規制の対象にされる動きがある等)、そして単純所持規制主張と関連づけて後藤らが行っている活動において、児童虐待防止に注がれるべき資金や人的リソースが「今現在虐待されている児童を救済するのとは全く無関係な」表現規制やネット規制を推進する方面に奪われ、議論がゆがめられているといったことは、児童の救済と保護という観点からも逆効果だと思えるのです。
 何よりも、この後藤啓二、虐待児童救済のために現場で尽力している人間というよりは、むしろ「警察権力拡大と表現や言論の規制を通じた国民の統制のために児童虐待や児童ポルノをお題目として利用している」だけの人間にしか思えないのです。それは、元警察官僚という経歴だけでなく、本文で述べられているような今までの行動で示されています。また、本文にもあるようにその目的のためには原理主義的な宗教系団体を利用することも行っています。こうしてみるとまさに彼は「松嶋×町山未公開を観るTV」中の多くの作品で痛烈に槍玉に挙げられているような人物類型にぴったり当てはまっており、彼をライナーノーツに起用したことは「フロム イーブル」だけでなく、今回の企画自体を貶めるものといっても過言ではなく、だからこそ鞘町さんがこの人選に深く失望している気持ちも理解できます。
 ただ、それは日本国内の表現規制問題について、世間への周知度が足りなかったが故だとも思えるので(おそらくライナーノーツの人選に関わった担当者も後藤の素性については知らなかったのでしょう。「せめて詳しくネット検索してくれれば」という気持ちも無いではないのですが)、その点では表現規制に反対するものとして教訓にしなければいけないとも思います。
最新記事
カテゴリ
最新コメント
一読の価値あり!
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

グーバーウォーク
ブログ内容の分析結果で謎の生物グーバーが産まれ、このブログの今を表します。
検索フォーム
投票ボタン
blogram投票ボタン
QRコード
QRコード
ツイッター
月別アーカイブ