ダンカン・ジョーズのオーク革命 映画「ウォークラフト」

 豊橋ミケ(以下猫) 小夜ちゃん、これもう終わってるんじゃにゃいの?
 九条小夜子(以下九) 何いってんの。TOHOシネマズ新宿と池袋のシネマ・ロサでまだやってるじゃない。
 何をやっているかというとゲームが原作の映画「ウォークラフト」。
  「D&D」や「ロードス島戦記」みたいにゃハイファンタジーだにゃ。
  RPG的といった方が通りがいいかもね。
 確かに原作であるゲームを知らないとわからない部分は確かにある。でもRPG的ファンタジーに慣れた人ならさっぱりわからないってことはないと思うよ。
 完結していないせいもあって、映画としての完成度は高くはない。ファンタジーに興味が無い人が観たらつまらないと思うかも。じゃあ駄作かというと決してそうではない。
 ストーリーを要約すると異世界から侵攻して来たオーク軍とそれに対抗する人間達の闘争劇。
  要約しちゃうと本当に典型的だにゃ。
  そうなんだよねぇ。でもこの話を人間側の視点だけで描いたらそれこそ凡百のRPG的ファンタジーなんだけど、「ウォークラフト」は違う。人間とオーク、双方の側に主人公といえるキャラクターがいて、それぞれの立場から物語が語られているんだ。だから他のゲームや映画では邪悪な怪物として描かれるオークも価値観の異なる知的種族として描かれ、彼らなりの倫理観が示されている。一方の人間側も正しい人ばかりではなく、世界を滅ぼそうとする悪人がいる。
  紋切り型のモンスターじゃにゃいんだにゃ。
  そういう事。オーク側の主人公がフロストウルフ族のデュロタン。オーク達の故郷は滅びつつあり、彼らは新天地を求めて人間達の世界に来たんだ。気性の荒いオークの中では彼は理知的な人格者。
  その前にオーク達がどうやって異世界に来たかを説明しておくにゃ。
 オーク達の指導者は戦士ではなく魔術師のグルダンにゃんだにゃ。グルダンの魔術は生命を代償に発動するものにゃんだにゃ。人間の世界に通じるゲートを開くためにたくさんの知的種族の命が必要にゃんだにゃ。
  侵攻前からグルダンの魔術に疑問を抱き、将来、オークに災いをもたらすのではないかと危惧していたデュロタンはグルダンに反旗を翻し、一対一の決闘に持ち込む。
 決闘は魔術を使ったグルダンが勝った。しかし、その勝ち方はオークにとってはタブーを犯すもの、戦士の誇りを汚す行為だった。
  他の作品じゃ勝つためには手段を選ばにゃいにゃ。
  「ウォークラフト」のオークには彼らなりの倫理があるんだ。
 グルダンはオーク達から卑怯者、決闘を冒涜したと非難されるけど、折悪しく人間達の軍隊が攻めてきて、決闘の事はうやむやになってしまう。
  人間とオークの戦いに決着はつかず、人間達はオークの勢力に対抗するべくエルフやドワーフと同盟を結ぶところで映画は終わるにゃ。
  終りじゃないよ。オークの物語にはまだ続きがあるんだ。
 デュロタンの反乱を知ったグルダンは彼の一族を虐殺する。デュロタンと共に人間の世界に来た彼の妻は殺される直前にまだ赤ん坊の息ゴエルを船の様な器に入れて川に流すんだ。
  それってまるで……。
  モーゼみたいだよね。
 ゴエルが人間の手で育てられる事を示唆するシーンで終わる。
  これで退場ってことはにゃいよにゃ。
  製作者は続きを作りたくてうずうずしてるみたいだね。ゴエルがどちらの側につくのか、あるいは同盟とオークの仲裁者になるのか、モーゼがユダヤ人をエジプトから脱出させたようにオークをさらに異なる世界に導くのか。いずれにせよ続編があるなら彼が主役になるかもしれないね。
  オークが主役ってかにゃり珍しいにゃ。
  ファンタジーにとっては画期的な事だよ。
  初めてかもしれにゃいにゃ。
  いや、20年以上前の1988年に山本弘が「モンスターの逆襲」ってゲームブックで同様の試みをしている。山本弘はその後もモンスターを倒されるだけの怪物ではなく、独特の思考や文化を持つ生物として描いている。彼が「ウォークラフト」を観たら絶賛するんじゃないかな。

 ずいぶん大胆な構想だなぁって思ってスタッフを調べてみて納得したよ。監督がダンカン・ジョーンズなんだ。
  誰それ?
  まだ「ウォークラフト」で三作目の若手監督だけど、デビュー作の「月に囚われた男」で企業に使い捨てられるクローンの悲哀を描き、「ミッション:8ミニッツ」では並行世界の他人に死ぬ直前の8分間だけ憑依、それを何度もくり返してテロを防ぐというループものの傑作を撮って映画通やSFファンから一目置かれている監督なんだ。RPG的ファンタジーである「ウォークラフト」を監督したのは正直、意外だけどSFやファンタジー要素が皆無な作品を撮るよりは納得できる。
  へー。
  ゲームの事は全く知らないけどウチはダンカン・ジョーンズ監督が続投するなら続きが観たいな。
 ちなみに「ウォークラフト」のエルフって何故か目が光ってるんだ。
  日本人にとってはかなり違和感のある姿だにゃ。
  ウチも同感だけど、それはそれでいいじゃない。そもそもオークはトールキンの創作だし、エルフにしたって伝承とはだいぶイメージが違う。「指輪物語」が今のエルフ像を確立したと思ってる人が多いけど、「指輪物語」のエルフが体力も人間を上回っていて、今、ウチらがイメージする優雅だがきゃしゃな種族なんかじゃないんだ。それに「ロード・オブ・リング」を観ればわかる通り昔のエルフの耳は笹の葉の様な細長い形じゃなかった。あれって実は日本発祥で、「ロードス島戦記」のディードリッドから始まったものなんだよ。
 ファンタジーの世界の住人達にとっては変わっていくのは珍しい事じゃない。こうでなくてならないって決めつけるよりも変化を受け入れる方が幅が広がるんだから喜ぶべきことなんだ。
  「ウォークラフト」のオーク像が浸透するかどうかはまだわからにゃいけどにゃ。
  可能性を開いたのは確か。やはりダンカン・ジョーンズは才人だね。


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