いい農家がいい料理人とは限らない 小説「ウルトラマンデュアル」

 豊橋ミケ(以下猫) え~、またウルトラマン
 九条小夜子(以下九) そういわないの。それにウルトラマンといっても新しく始まる「ウルトラマンオーブ」の話じゃないよ。
  えっ、違うの?
  ミケ、去年早川書房と円谷プロのコラボレーションの話をしたよね?
  ああ、小夜ちゃんがケチつけてたヤツだにゃ。
  愛の鞭だよっ!
 去年の夏に「SFマガジン」での連載をまとめた「多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー」に続き今年1月に「ウルトラマンデュアル」が発売された。
  ずいぶん間が開いてるにゃ。
  ……いろいろあってね。最近になってようやく読み終えたのよ……。
  設定は面白そうだにゃ。
  そうなのよ、設定はいいの! 宇宙警備隊と宇宙人連合ギャラフィアンの戦いに巻き込まれた地球。
  宇宙警備隊って?
  (目を丸くして)ミケ、知らないの?
  (小夜子の耳元で)平成シリーズからのファンには知らにゃい人もいるにゃ。そういう人への配慮だにゃ。察するにゃ!
  あっ、そういう事ね。
 宇宙警備隊っていうのは昭和ウルトラシリーズの基本設定で、一言でいえば宇宙の平和を守るための組織なの。作中ではM78星雲人、つまりウルトラマンの同族達しか出てこない。
  他にもいるんだろうけどにゃ。
  厳密にいえばレオとアストラはM78星雲人じゃないしね。
  セブンのカプセル怪獣はどうにゃるのかにゃ? セブンの部下にゃの? それとも装備?
  うーん、命令を理解しているから犬並の知性はあるはずだけど、あいつらに事務仕事は無理だろうなー。警察犬みたいな存在だろうから……装備ってことになるだろうな~。
 話を戻すね。宇宙での両者の戦いは共倒れという形になり、それぞれの生き残りが地球にやって来た。宇宙警備隊の生き残りはウルトラの聖女ティアとピグモンのピグGに二人が乗ってきた宇宙船だけ。対するギャラフィアンは構成種族の一つヴェンダリスタ星人のキップ、ラト、メイスの三人に彼らが宇宙警備隊から奪った怪獣のみ。だが、狡猾なヴェンダリスタ星人は地球人との交渉で援軍の存在をちらつかせ、地球人に服従を強いる。
 そうした事情をくんだティアは宇宙船が墜落した東京近郊の一部を占領、光の国の飛び地にするという形で拠点にした。
 政治的配慮から地球人は飛び地での出来事に一切関与しない。
  ヴェンダリスタ星人に協力した後にウルトラマンの援軍が来たら大変だもんにゃ。
  その逆もありうる。だからティアに協力するために飛び地に渡る人達は国籍を捨て、日本との縁を切らなければならない。
  面白そうにゃ設定だにゃ。
  でしょ? 他にも分裂させた精神を人間にとり憑かせて操るヴェンダリスタ星人など設定だけはいいの。
  だけ?
  そう。いいのは設定だけなの。発想はすばらしいけど、それを見せるストーリーテリングはお世辞にもいいとはいえない。
 例えばね、ティアも精神を分割し、その一方を地球人の少女に憑依させてるの。で、その事に気づいたヴェンダリスタ星人の魔手が少女に迫る。
  わ、大変だにゃ。
  そう思うでしょ? ところが偶然その場に居合わせたウルトラマン、あ、この「ウルトラマンデュアル」でのウルトラマンはM78星雲人ではなく、ティアからウルトラマンの力を与えられた地球人なの。個体差が大きくて誰もがウルトラマンになれるわけじゃないんだ。ヴェンダリスタ星人が憑依した地球人に少女が捕まった時、ショルト・ミストって光線を浴びせてヴェンダリスタ星人を地球人の身体から追い払う。さすがウルトラマンっていいたいところだけど、これ、1ページにも満たないの。
  え?
  あまりにもあっさりだよね。他にもクライマックスでヴェンダリスタ星人はティアに憑りつく。ウルトラの聖女は否応なく相手の生命を奪える超能力を持っていて、それでウルトラマン達を苦しめる。
  絶体絶命のピンチだにゃ。
  そう思うでしょ? ところがすぐにティアと少女の抵抗を受けて形勢逆転。これ、2ページもない。
  え……?
  地球人の声援を受けて……って描写はあるんだけど、それが実にあっさりしたものなのよ。同様のシチュエーションなら過去の映像作品にもあったけど、そういう場合、ウルトラマンの危機を描いた後、声援を送る個々の人々の姿を描いてから逆転に入るじゃない。でも「ウルトラマンデュアル」の場合、声援があったって事しか書いてない。どういう人がどんな声援を送ったのかは全く描かれていない。それを描写するのって結構大切なんだなって逆説的にわかったよ。
 とまあこんな具合に危機に陥っても数行後には解決しちゃってるのよ。よく手に汗握るっていうけどその暇もない。シチュエーション自体はいくらでも膨らませて面白くできるものなんだから本当にもったいない。
  ヴェンダリスタ星人星人の手に落ちたティアか少女の救出作戦とか見てみたかったにゃあ。
  でしょ? 面白くできそうな設定なのに活かせてないのよ。
 怪獣に魅力が無いのも辛い。ストーリーの都合上仕方ないことだけど、兵器として扱われていて個性が無いんだ。
 明らかに作者は怪獣よりもヴェンダリスタ星人や地球人の政治的動向の方に力を入れている。
  それってウルトラマンファンが読みたいものかにゃ?
  だよね。「ウルトラマンX」が人気を博した理由の一つは怪獣を魅力的に描いた事だもん。政治的な話を書くなとはいわないけど、ウルトラシリーズならそれは味付け程度に抑えた方がいい。
  小説とウルトラマンって相性が悪いのかにゃ。
  映像でしか表現できないものがあり、ウルトラシリーズの魅力がそこに負う部分が大きいのは間違いない。でもウルトラシリーズ小説化が不可能だとは思わない。
 発想の飛躍では負けるけど朱川湊人が「ウルトラマンメビウス」に提供した脚本を小説化した「ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント」の方が「ウルトラシリーズ」の面白さをちゃんと理解していて、小説としてもずっと面白い。
 くり返すけどアイデアはとてもいい。でもそれを活かす描写がなかった。
  残念だにゃ。


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テーマ : ウルトラシリーズ
ジャンル : テレビ・ラジオ

tag : ウルトラマン 小説 ウルトラシリーズ

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