セントアンナの奇跡

 九条小夜子(以下九) 冒頭、年老いたヘクター・ネグロンがジョン・ウェインの戦争映画を観ながら「俺達もこの国のために戦った」とつぶやく。このシーンでウチは一気に引きこまれたね。
 豊橋ミケ(以下猫) 確かにこの映画のテーマが凝縮された名シーンだったにゃ。
 この映画っていうのはスパイク・リー監督の戦争映画「セントアンナの奇跡」だにゃ。
  「父達の星条旗」「硫黄島からの手紙」に黒人兵が出てこない事で文句を言ったら逆に監督のクリント・イーストウッドに「実際にいなかったんだからしょうがないだろう。いちゃもんをつける暇があったら歴史を勉強しろ!」と怒られたって噂が本当と思えるくらい細かい所まで描かれている。
 もっともウチらはどこまで正しいかを判断できる程の知識はないんだけどね。
  冒頭のシーンからもわかる通り、この映画のテーマはアメリカの黒人兵部隊だにゃ。ベトナム戦争を描いた映画では当たり前のようにいるし、現代劇ではむしろ黒人兵の方が多いような印象を受けちゃうけど、実は第二次世界大戦当時は米軍の大半は白人兵だったんだにゃ。
  朝鮮戦争ではどうだったかはウチにはわからない。
 南北戦争で活躍した黒人兵部隊をメインにした「グローリー」って映画があったけど、実質的な主役は白人指揮官だった。黒人兵部隊の歴史を描いたという点で「セントアンナの奇跡」は「グローリー」の系譜に連なる映画だけど、黒人兵の視点で描かれた「セントアンナの奇跡」はより進歩しているといえる。

 白人指揮官が黒人兵やパルチザンを信用しないどころか露骨に軽蔑していたし、出征前に本国で寄ったカフェでは敵国の捕虜はOKなのに同じ国民であるはずの黒人兵に食わせるものはないと言って追い出そうとする。
  それは戦後も変わらにゃい。公民権運動の発端がバスの白人専用席に黒人のローザ・パークスが座った事だったにゃ。
  ドイツ軍が黒人兵達の士気を下げようと装甲車からプロパガンダ放送をするシーンもあって、映画の3分の1ぐらいは黒人兵の過酷な状況を描く事に費やされている。だからビショップという兵士が信仰を捨てた理由や差別されないイタリアの方がいいといって村に残ろうとする気持ちもよくわかる。

 デビュー作から一貫して人種差別に抗議してきたスパイク・リーだけあってステレオタイプな描き方はしていない。
 例えばタイトルロールのセントアンナの奇跡を体現する少年を虐殺の地から逃がしたのはドイツ兵だし、虐殺の原因を作ったのはドイツの占領からイタリアを解放するはずのパルチザンの一人。白人だって皆が皆黒人兵に偏見を持ってるわけじゃない。

 ただ難をいえば話にセントアンナの奇跡を持ち込む必要性が低く、とってつけたような印象がある点かな。原作は未読なのでスパイク・リーの責任じゃないかもしれないけど。
  それ以上に気になるのは“眠る男”。ヘクターが新聞記者に「私は知っている。“眠る男”が……」みたいな事を言ってたよにゃ。確かに舞台になったトスカーナの村にはそういう山があって村人から守護神として崇められていた。でもそれだけで、話の中では何の役割もはたしてにゃい

  イタリアといえばスパイク・リー映画には縁の深い人達。
 常連のジョン・タトゥーロはイタリア系だし、出世作「ドゥ・ザ・ライトシング」では黒人達と対立していたし、異人種間恋愛を描いた「ジャングル・フィーバー」で黒人男性と不倫の恋に落ちるのはイタリア人女性だったし。
  白人とはいえイタリア系は差別を受けてきたにゃ。そこにシンパシーを抱いているのかもにゃ。

  このブログを読んだら辛気臭いだけの映画みたいに思われちゃうでしょうね。
  村人や少年と巨漢の黒人兵との交流はハートフルだにゃ。
 肩肘張らずに楽しめる映画にゃので機会があったら是非観てほしいにゃ。
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tag : スパイク・リー セントアンナの奇跡 黒人兵 第二次世界大戦 米軍

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