SF映画の定義って? 「SFマガジン」10月号

 九条小夜子(以下九) 今回は珍しく雑誌の話。
 豊橋ミケ(以下猫) 「SFマガジン」の話だにゃ。 
  ウチが取り上げたいのは最新号の10月号。

 

  最新っていっても発売されたのは先月の25日だけどにゃ。
  12月号が出るまでは最新号! だから間違った事はいってないっ!
 澤村伊智の短編「翼の折れた金魚」が素晴らしかった。
 性交する前に飲めば金髪碧眼で知能の高い子供が生まれる薬コキュニア。それが普及し、計画出産によって産まれた子供が大多数を閉める世界を教師の目で描いている。
 その社会では昔ながらの出産で産まれた子供はデキオ、デキコと呼ばれる。
  出来ちゃった婚からきているんだにゃ。
  デキオ、デキコは劣った存在と見なされていた。語り手である教師もその価値観に染まっていて、デキオ、デキコを蔑視したり、憐れんだりしていたけど篠宮玖羅葉という無計画出産児が類い希な音楽の才能を持っていたと知り、自分の価値観に疑念を抱き、恥じるようにすらなる。
 だが、家庭訪問の際、玖羅葉の両親が計画出産に疑問を感じ、コキュニアをあえて飲まなかった事を知ると激昂し、児童虐待として通報。玖羅葉と両親を引き離し、彼女の心に深い傷を残す。
 その後、同僚の教師が出産したので、子供を見に行った教師は彼女のずさんな育児に動揺する。彼女は玖羅葉の両親とは逆にコキュニアを飲んだのだから子供への義務は果たした=もう何もしなくていいと思っていたのよ。
  ひどいにゃあ。どう産むかじゃにゃくてどう育てるかが大切にゃのににゃあ。
  やがて主人公夫婦にも子供が産まれる。だが、その子は両親と同じ黒い髪に黒い瞳をしていた。産科医によれば形質的特徴が現れないケースはよくあるという。
 教師はかつて教え子の無計画出産児をコンタクトレンズと髪を染める事で計画出産児に偽装していた親を無計画、無責任と非難していたが、その親と同じ事を我が子に施すようになる。
  デザイナーズチャイルドものってジャンルがあるかどうかわからにゃいけど、その傑作だにゃ。
  差別を自明のものとして受け入れ、我が身にふりかかってもなお改めることができない。世界を疑わなかったが故の悲喜劇。根付いてしまった差別意識の怖さが伝わってくるラストだったね。


 巻頭特集はオールタイムベストSF映画
  順番、逆じゃにゃい?
  まあ、この方がインパクトあると思ったんで。
 いつぞやの早川SF特集みたいに二回に分けてSF映画の傑作を紹介している。10月号は映画黎明期から80年代まで。
 しかし、そのラインナップの中には首をひねるものがあるのよ。
 「オズの魔法使い」、「エノケンの孫悟空」、「素晴らしき哉、人生!」、「シンドバット七回目の航海」、「大盗賊」、「博士の異常な愛情」、「太陽の王子ホルスの大冒険」、「ホーリーマウンテン」、「HOUSE ハウス」、「タイタンの戦い」、「魔界転生」、「コナン・ザ・グレート」シリーズ、「ネバー・エンディング・ストーリー」、「ダーク・クリスタル」が紹介されているんだけど、どれもSFじゃない
  どっちかっていわにゃくてもファンタジーだにゃ。
  「博士の異常な愛情」は違うけどね。
 話を戻すけどいつからファンタジーはSFの一ジャンルになったんだ? ウチはSFとファンタジーは別だと思ってたんだけど。
 確かにSFであると同時にミステリーでもある「鋼鉄都市」や「はだかの太陽」みたいに複数のジャンルの特徴を持つ作品はあるし、最近は増えてきていると思う。将来、SFやファンタジー、ホラーを一つにまとめるジャンルができるかもしれないけど、それはSFとは異なるものだろう。
 百歩譲って現実には起こりえない事を描いているって理由で、ウチが挙げた作品をSFであるとしても、「野火」SFじゃないでしょ!
 何でもJ・G・バラードに影響を与えたって書いてあって、それを読んだ時、ウチは何いってんだ!? って思ったね。SF作家に影響を与えたからってSFにはならんでしょう! そもそもSF以外から一切影響を受けてないSF作家なんているの?
 ウチが挙げた作品群がSF映画と見なされている事を高千穂遥はどう思うのかな?
  え? 何で高千穂遥の名前が出てくるんだにゃ?
  80年代のガンダムブームの際、高千穂遥らSF作家が科学考証やSFマインドの無さを理由に「ガンダム」はSFじゃないって批判した事があったのよ。SFマインドについては正直、ウチもよくわからないけど、科学考証って点ではウチが挙げた作品がSFに分類できないのは明らかでしょ?
  確かに科学のかの字も無いような作品があるもんにゃあ。
  SF界がおおらかになったとしてもウチが挙げた作品はSFには分類できないと思う。科学考証やSFマインドの地位が低下したと考えれば昔ながらのSF者には受け入れ難いんじゃないかな。
  小夜ちゃんはどっちにゃの?
  それがわからなくなっちゃったのよ。「SFマガジン」10月号を読むまではジャンル分けに意味なんか見出してないつもりだったんだけど、あのセレクトを見ちゃうとね……違うだろっていわずにはいられなくて……。
  ジャンル分けって難しいにゃあ。
  何にせよ時代は変わったなあって思うよ。

 
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むかし性病、いま二次元 「別冊宝島268 怖い話の本」

 「怖い話の本」表紙

 豊橋ミケ(以下猫) ……これまたずいぶん古い本だにゃ。
 九条小夜子(以下九) 奥付には1996年7月14日発行と書いてあるから21年前だね。
  今月は古い本月間にゃの?
  そういうわけじゃ……偶然そうなっちゃったのよ。
  「怖い話の本」というと怪談か何かかにゃ?
  それとね。でもそれだけじゃないんだよ。
 90年代の別冊宝島はディープで充実した内容のルポが多かったのよ。
  ルポで怪談? 実話系怪談の本かにゃ。
  火付け役の「新耳袋」が出たのはこの頃だけど、これは違うのよ。確かにテーマは怪談だけど、その中身ではなく背景に光を当てた面白い本なの。
  ……わかりにくいにゃあ。
  じゃあもう少し踏み込んで紹介しようか。


 トップバッターは大泉実成の「サリン事件の殺害現場に、亡者の叫びはきこえたか!」。陰惨な事件、事故の現場で幽霊を見たって話はよく聞くじゃない?
  「新耳袋」にもいくつか載っていたにゃ。
  大泉実成はそうした幽霊話を求め、この本が出た頃はまだ起きて間もない二つのサリン事件の現場を取材したんだけど、意外や意外、幽霊話は無かった。
  そういえば霞が関駅に地下鉄サリン事件の被害者の幽霊が出るにゃんて聞いた事にゃいにゃ。
  実は長野県の松本サリン事件の現場である明治生命寮に出るって話が地元の中学生から出ていたんだけどね。でもそれ、ごく一部の間にしか広まっていないようで、大人達からは全く出てこない。それどころか逆に幽霊を否定する話を聞かされる始末。
 幽霊話が定着するためにはまずそれがにならなければならない。
  突然何をいい出すにゃ。でも確かにそうだにゃ。
  しかし、松本サリン事件の場合、幽霊よりも先に重要参考人として警察に連行された河野義行の事がになった。それがいけなかった。河野義行の冤罪が証明されると、地元の人達は警察やマスコミのいう事をうのみにし、無責任なの流布に加担したことを恥じるようになった。
  無責任な第三者ではいられにゃくにゃったんだにゃ。
  そう。河野義行に対する罪悪感が幽霊話を封じてしまったと大泉実成はにらんでいるの。
  地下鉄サリン事件の方は?
  これはつまらない話で、罪悪感の代わりに地下鉄サリン事件の舞台=危険というイメージがついて客足が遠のくことを恐れた営団地下鉄が封じたのよ。この本で初めて知ったんだけど、営団地下鉄は営業している間、現場に供えられた花を撤去していたくらい徹底して現場を“漂白”していたの。
  は~。
  そもそもオウム真理教事件はサリン事件発生からサティアンへの強制捜査、TV局が教団幹部の上祐史浩らをワイドショーに呼んだり、教祖の浅原彰晃の奇行、彼の側近だった村井秀夫が暴力団員に刺殺されるなど、次から次へと事件が起こった。
 いい方は悪いけどお茶の間に絶えずホットな話題を提供し続けていた。しかもではなく現実。
  インパクトは段違いだにゃ。
  誰もがオウムのニュースに目を奪われていた。そこに幽霊話が入り込む余地は無かった。
  はー。冤罪事件がなくても変わらにゃかったと?
  ウチはそう思う。でも大泉実成は松本サリン事件現場では「幽霊が出ないために来ている」と言いいはる自称不動産業の電波老人に、地下鉄サリン事件の取材では牛乳を飲んでサリンの毒性を中和したと主張するイラン人に会っている。
  芽は出てたんだにゃ。
  オウム真理教事件がもっとずっと小規模な事件だったらもしかしたら……。
  残念っていっていいのかにゃあ……。
  事件が事件なだけに微妙なとこだね。
 ここだけ読むと幽霊を否定しているように見えるけど、そうじゃない。霊が見えるという当時30代の男性のインタビュー「見えてしまう不幸」や会社絡みの怪談も載せている。
 後者は「ノンフィクション! 会社の怪談」っていうんだけど、これ、怪談とは関係ない部分が凄いのよ。
 ミケ、ちょっとここ読んでみて。
  えーと、「
五年ほど前、大森に(株)NTTリースが独身寮を新築したんです。」!?
  次はここ。 
  「
私は以前、ジャパン・フィルム・センターというテレビの制作会社で仕事をしていました。NHKに常駐し、」……って実名出してるにゃ!
  そうなのよ。全部がそうじゃないけど企業名や具体的な地名を出しているの。
  隠す気にゃいにゃ。
  よく昔の雑誌や新聞は平気で作家や投稿者の住所を載せていたけど、80年代にはそんな事なくなっていた。
  昔はおおらかだったじゃ説明できにゃいにゃ。
  読む度にいいのかな~、これ? って思うよ。
 どっちも真偽には踏み込まず、怪異の紹介に留めている。その路線の最高傑作といえるのが大泉実成の「<マンガ・アニメ業界の残酷物語> ドブ川に死す!」。漫画家やアニメーター達の間の噂を紹介しているだけで、中には新鮮味の無い話もあるけど、裏話的な面白さがある。
 怪談絡みでは佐伯修の「白い巨塔に巣食う怨念」も面白い。タイトルに反して怨霊なんか出ないんだけどね。
  タイトルからすると病院が舞台の怪談がテーマだにゃ?
  正解。面白いのは怪異ではなくそれに対する病院の人達の反応。
 怪談について尋ねたところ「
『職場だといかに合理的に働くかばかりを考えているせいか、ほとんどそういったことを気にしません。またあまり怪談めいたことを同僚と話すこともありません。忙し過ぎるんですかね』」。
  へ?
  こんな答えもあった。「
『幽霊も怪奇現象も信じません。でも、本当は見てるのかもしれませんね。ただ、見ても気がつかないくらいボーッとしているか、逆に忙しい時は、オバケと人間の区別もつかないのかも。時どき怖い話とかを聞くことがあっても、『あ、そう』で終わっちゃうのね』」。
  ……それどころじゃにゃいって事?
  ぶっちゃけそういう事。何せ「
胃潰瘍の手術後三日目に、看護婦をだまして、点滴チューブを引きちぎって脱出、廊下に点々と滴る血痕を辿ったところ、バス通りで交通を止め、オチンチンの先にカテーテルを突っ込んだまま仁王立ちになり、両手にピンセットを持って、バルタン星人のような格好で大見得を切っていたオヤジ。」がいるくらいだからね。
  それ本当にゃの? 
  支離滅裂すぎるからウチはかえって本当の話だと思う。
  幽霊よりそのオヤジの方が怖いにゃ。
  実は妖怪バルタンじじい。
  笑い声は当然……
  ヴッフォッフォッフォッ
  とまあ、生きている人間の方が怖くて大変だからとても幽霊の相手なんかしてられない。
 とはいえ死を全く意識しないわけでもない。例えば患者の遺体処理をした後は必ず着替える。そうしないと気持ち悪いとか、患者が死んだ後は勤務明けにシャワーを浴びる。そうしないと「プライベートな時間に入れない」と言う看護師がいる。記事でも指摘している通り、当人にはそのつもりはなくても死を穢れと見て忌み嫌い、私生活に持ち込みたくないと思っているんだ。
  意識下に神道思想が入ってるんだにゃ。
  看護師もやはり人の子、それも日本人の子って事だね。もしかしたら神道とは無縁な文化圏の看護師はそんな事しないのかもしれない。
  こうにゃると科学で説明できにゃい事は一切信じにゃいってわけでもにゃさそうだにゃ。
  そう。先にもいったけど病院で働く人達にとって怪異は信じる信じないじゃなくて相手にしてる余裕がないって事だから、病院での怪異が否定されているわけじゃない。実際、郡暢茂って徳島県の医者が病院で起きた怪談話を収集し、分析した「医療現場の『ふしぎ体験』」って本があって、佐伯修はそこからいくつかのエピソードを引用している。
  小夜ちゃんはその本、読んだことあるの?
  いや、ウチも未読なんだ。ネット書店とかなら手に入るみたいだけど。
 面白いことに点滴スタンドを持った老人の幽霊を見た話では、点滴の種類ははっきりわかるくせに肝心の老人の顔がわからなかったり、幽霊とは知らずに見てしまった入院患者がのん気に「あの人、しばらく見ないと思ったら退院したんだね。こないだ見かけた時は前より元気そうだったよ」と言うなど、怪異の受け止め方がズレてるんだ。
  病院ってやっぱり特殊な場所にゃんだにゃあ。
  それにしても死んでる方が元気とはね。


 次は幽霊とかは出ない地に足のついた話をしよう。まずは林巧の「四肢切断!! だるま女の正体をつきとめろ!」
  地に足?
  ミケはだるま女って何だかわかる?
  ごまかしたにゃ。さらわれた女の人が手足を切り落とされて外国で見世物にされたり、売春をやらされてるって都市伝説だにゃ。
  外国は東南アジアなどが多いんだって。で、東南アジアに詳しい林巧によるとそもそも東南アジアには見世物小屋は無いそうな。
  じゃあだるま女を東南アジアで見たっていう話は……。
  幽霊が生身の女に変わっただけかもね。
 本当は見世物小屋を楽しみたいんだけど、それをやるには自意識が高くなってしまった日本人がせめて空想の中だけでもと無意識に作り上げた都市伝説ではないかと林巧はいっている。
  東南アジアの人には迷惑にゃ話だにゃ。
  生臭いのは浅野恭平の「骨ひろう人びと」。第二次世界大戦の激戦地での遺骨収集にまつわる話を発端から遺骨と動物の骨の見分け方に至るまで幅広く紹介している。
  動物の骨との見分け方?
  人間の骨の断面には細かい穴がいっぱいあるんだって。医者の話じゃないから本当かどうかはわからないけど。
  実践的だにゃあ。
  ウチらにとっては使い道の無い知識だけどね。
  この本で得た知識をフル活用できる人って……。
  何でそんな話が出てきたかというと、遺骨収集にはお金がかかる。そのおこぼれにあずかろうとヤクザらしき人達が介入するようになったからなんだ。
 彼らは遺骨収集の名目で企業から金を集め、後で見つけた骨の写真を証拠として見せる。でも証拠写真に写っているのが遺骨とは限らない。動物の骨の方が多いんだって。
  この本が書かれた時点でも終戦から50年経ってるんだもんにゃあ。
  純粋な善意なら問題ないかというとそうでもない。今、どれだけ残っているかわからないけど、当時は遺骨収集の団体が乱立し、費用が安いのをいいことにそれぞれが記念碑とかを建てるものだから、その維持管理をどうするのか、取材を受けたダイバーショップを経営している日本人は憂慮していた。激戦地の一つペリリュー島だけで三十程の碑があるんだって。
  多すぎだにゃ。それじゃ現地の人も迷惑だにゃ。
  さすがに無断では建てていないし、碑の建立の手伝いの謝礼はいい臨時収入になったとか。案外気にしてないのかもよ。
  だといいけどにゃあ。


  ウチが一番興味をひかれたのは田中聡の「パンツをはいたロウソク病!」。
  ロウソク病って何にゃ?
  ベトナム戦争時、ベトナムから日本の米軍基地に移った米兵達から拡まった性病で、男性のアソコがロウソクのように溶けちゃうんだって。
  そ、それ、本当にあるの?
  実はある。軟性下疳といって亀頭に潰瘍ができる病気で、病状が進行するとペニスが溶けちゃうんだって。
  え~……。
  あくまでも症状が進行した場合だよ。サルファ剤で簡単に治せるんだ。ちゃんと診察を受ければ怖い病気じゃないんだよ。
  それ、今の話じゃにゃいの?
  サルファ剤は1930年代後半にできたんだよ。だから軟性下疳は今どころかベトナム戦争の頃でも怖い病気じゃなかったんだ。
  ベトナム戦争時に拡まったっていうのは……。
  真っ赤な嘘。昭和四十年代には週刊誌等で新たな性病が上陸したって話が何度も報じられた。ロウソク病はその一つに過ぎない。
 田中聡は1995年に厚生省が出した「国民衛生の動向」からデータを抽出し、性病が蔓延しているどころか逆に年々減っている事を示している。

 「怖い話の本」表

  本当だにゃ。
  軟性下疳の患者数は昭和三八年には三ケタ、昭和五〇年には二ケタにまで減っている。昭和五九年に106人に増えたけど、これは一時的なものに過ぎず、その後順調に数を減らし続け、平成五年にはとうとう一ケタになっちゃった。そして今ではすっかり忘れられている。ベトナム戦争の時に拡まったなんて話がでっちあげなのは明らか。
  じゃあ何で新しい性病が上陸にゃんて話やローソク病が拡まったなんて話が雑誌に載ったんだにゃ?
  日本に昔からあった性病が息を吹き返したんじゃなくて海外からやって来たって話になっているところに注目して。
 田中聡はこんな逸話を紹介している。
 1984年に長野県佐久市の県営プールに入ると性病にかかるって噂が流れて入場者数が激減した事があったの。
  水を介して感染するにゃら性病とはいえにゃいようにゃ……。
  ウチもそう思う。何故そんな噂が流れたか? 実はその頃、長野県佐久市周辺では東南アジアから来た女性がキャバレー等で働き始めていた。多くは店外デートをしていた。
  店外デート?
  お客さんの歓心を買うためにキャバ嬢がと外で会う事。食事をしたり買い物をしたりとかするんだけど、お客さんの方は……ね。
  ね?
  ミケが考えるような事してるんじゃないかって見られてたのね。
  あっ、ずるーい!
  不道徳な存在と見なされていたところに「東南アジアの人達はプールをお風呂代わりにしている」ってデマが加わった。こうして偏見とセックスとプールが結びつき、性行為無き性病の噂ができあがった。
 噂の中の性病が全てそうだとはいえないけど、その裏には外国人に対する忌避感、差別意識がある。
  外国人の方こそいい迷惑だにゃ。
  濡れ衣よりタチ悪いもんね。
  そういえばAIDSもホモの病気だとかいわれてたにゃ。
  80年代のAIDS患者に同性愛者が多かったのは事実だけど、同性愛者だからAIDSにかかったわけじゃない。レーガン政権はゲイに対し差別的で、AIDSを彼らだけの病気と見なしてまともな対策をしなかった。
  ウイルスに同性愛者か異性愛者かどうかなんてわかるわけにゃいにゃ。
  レーガン政権はAIDSを神の罰と思っていたのよ。
 病気の噂の陰に差別が潜んでいるのは日本だけの話じゃないんだね。
  病気の噂を聞いたら差別と思え!
  そういい切っちゃうのもどうかと思うけど……。
 昭和四〇年代にはもう一つ、いや、もう一人いた。三悪追放教会会長の菅原通済だ。
  三悪?
  彼の場合は売春、性病、麻薬の事だね。
  あっ、雑誌で反性病の記事を書いてたんだにゃ。
  いい事してるように見えるでしょ? 彼は1965年に「月刊ひろば」って雑誌のインタビューにこう答えている。

 長崎県の報告によると、(中略)実際梅毒菌を探すのに骨が折れるという状態にまでなったんです。ところがだ。三十五年の暮れになってから性病のうち、特に梅毒が急カーブで増えだしてきた。考えてみると、ちょうど、その頃から世相が目に見えて悪化して、「性」を遊戯化する傾向が現れてきている。つまり、世道人心が頽廃してきたんだね
  こ、心の乱れ?
  先に挙げた表を見ると彼のいう昭和三五年の梅毒患者数は前年より1342人少ない10126人。翌年にはさらに減って7313人になっている。
  全然増えてにゃいにゃ。
  今だからいえる事かもしれないけど菅原通済の主張は事実無根だったんだ。
 同じインタビューで彼は「
16歳の少女が、梅毒を二人の学生にうつし、その学生から四十何人かが罹患している。患者はみんなティーンエイジャーで、十六の娘が震源地――もちろんその先もあるわけだが――というから恐れ入った話だ」と言っている。
  16歳の少女より学生の方がうつした人数が多いのにそっちはお咎めにゃし?
  梅毒なんて昔からある性病だし、「その先もある」と言っておきながら16歳の少女を「震源地」呼ばわり。この事から菅原通済が本当に問題視しているのが性病じゃないのがわかる。
 菅原通済は年端もいかない女の子が性行為をしたのが許せないんだ。性病はカモフラージュに過ぎない。
 もちろん16歳の女の子が梅毒にかかるというのはいい事じゃない。だからって事実に反する事をいっていいわけじゃない。
 ミケ、何かに似てると思わない?
  え……あ、表現規制だにゃ!
  そう! 犯罪を助長するとか青少年に有害とかいって漫画やアニメの性表現や暴力表現を規制しようとしている連中と構図は同じだよ。
 表現規制派の主張が正しいなら何で日本より性表現、暴力表現への規制が厳しいアメリカやロシアの方が犯罪件数が多いの?
  表現規制には何の効果も無いって事だよにゃ。
  表現規制派も菅原通済も自分の倫理観を他人に押し付けてるだけ。性病や青少年保護はカモフラージュに利用してるだけなんだ。カモフラージュしないだけトランプ米大統領の方がマシともいえる。
  そうかにゃあ……。
  菅原通済の場合、彼の記事を読んで思い当たるフシのある人が病院に行ったので早期発見につながった例もあるから百害あって一利無しとはいえない。でも表現規制派は害しかない。
 ちょっと重い話になっちゃったけど「怖い話の本」は「あの噂や怪談の裏にはこんな事があったんだ」という驚きに満ちた本なんだ。
  軽い気持ちで読んでも楽しめるにゃ。
  21年も前の本だから古びている部分があるのは確かだけど、怪談や噂の中に思いもよらないものが埋もれていて、それを掘り起こそうという試みはポスト真実の時代の今にこそ求められるものなんじゃないかって気がする。
 復刻してより多くの人に読んでほしい一冊だね。


 

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古書という名のタイムカプセル

 九条小夜子(以下九) ミケミケ、これ、東武線の浅草駅でやってた古書店市で見つけたんで買ってきたよ~。

東武浅草駅の古書フェアで買った本

 豊橋ミケ(以下猫) ま~た無駄づかいして……。
  必要不可欠かっていったらそうじゃないんだけどウチは貴重なものを買ったと思うよ。
  どこが貴重だにゃ。横溝正史の金田一シリーズにゃんて今でも買えるにゃ。
  いやいや、それがそうじゃないんだよ。今の金田一シリーズって単色の背景に漢字一文字のシンプルな表紙に変わっちゃってるんだ。
  嘘っ?
  本当だよ。検索してみればすぐに出るからやってみ。
  あ、本当だ。でもシンプルにゃイラストの表紙もあるにゃ。
  え? あ、本当だ。でもやっぱ金田一シリーズの表紙っていえば昭和のおどろおどろしい絵に限るよね。
  そ、そうかにゃあ……。
  こう思ってるのはウチだけじゃないよ。金田一シリーズを紹介するブログで本の画像を載せてる場合、今の表紙じゃなくて昭和の表紙の方を載せてるとこが多いんだ。長谷川博己主演の「獄門島」が放送された時にNHKBSで放送された特番でも昭和の表紙の本を使っていたしね。
  ふ~ん、やっぱり皆昭和の方がいいのかにゃ。
  今の表紙はスタイリッシュだけどインパクトが薄いもんね。それに比べ昭和の表紙は泥臭い一方強く印象に残る。女の子の中には抵抗を感じる人もいるだろうけどね。
  損してる面がある事は否定しにゃいんだにゃ。
  なんかいかがわしさも感じられるしね。
 名前が出たついでに長谷川博己の「獄門島」の話をしよう。
  ……。
  そんなに長くないから。
  先月再放送してたにゃ。
  BSでもゴールデンタイムに再放送って結構珍しいんじゃない? それだけ評判がよかったって事かも。
  今までの金田一耕介とは随分違ったにゃあ。
  今までの金田一耕介像って市川昆版「八つ墓村」のパンフで大槻ケンヂが書いていた通り“名僧”なんだよね。犯罪は許さないけど犯人を責めるわけじゃない。むしろ犯人にも理解を示す。
  映像化された作品の犯人って欲得ずくじゃにゃくてやむにやまれぬ事情で罪を犯す人が多いもんにゃあ。
  原作だと欲得ずくの人もいるんだけどね。
 原作の金田一も人格者としての態度は崩さない。それに比べると長谷川博己の金田一っていい方は悪いけど攻撃的。
  犯人を嘲笑い、罵る金田一って初めて見たにゃ。
   「ご苦労様でした。ざまあ見ろ!」だもんね。
 あのシーンの了然和尚って全ては死んだ鬼頭嘉右衛門のせいで自分は悪くないみたいな言い方をした挙句、せっかく俳句を書いた屏風というヒントを出してやったのに事件を止められなかった金田一も悪いみたいな事まで言い出したからね。ああ言いたくなる気分もわからないではない。
 金田一が何故犯罪捜査に関わるのか、その事に言及しているのも初めてじゃないかな? 原作では人間心理の探求って風に説明していたけど。
  長谷川博己版の「獄門島」では二種類の説明をしていたにゃあ。
  留置所での幻影に対する説明は原作に近くて、犯罪者の心理に興味があるって言っていたけど、事件解決後、早苗に対しては「今を生きるわけが欲しかった」と言っている。幻影の質問に対しては目をそらして答えていたけど、早苗には真正面から相手の眼を見て告白していた。
  本心はどっちかにゃ?
  長谷川版「獄門島」は今まで一番島の閉鎖性が強く出ていたね。原作でも閉鎖的とか恐ろしい島とかいわれているけど、実際に行ってみると島民は結構気さくな人達として描かれているんだよね。
  そうそう。皆愛想いいんだよにゃ。
  長谷川版「獄門島」の島民達って愛想のかけらもない。鬼頭家について金田一が尋ねた時のつっけんどんな対応って今までには無い描写だった。
  あと三姉妹の父である与三松の事を初めは隠していたのも斬新だったにゃあ。
  あれは盲点だった。考えてみれば身内に精神疾患の者がいたら隠して当然だよね。今だってあまりいいイメージじゃないんだから昔はもっとひどかったはず。でも今までの「獄門島」では自発的に言い出したりはしなかったけど、隠してもいなかった。訊かれると眉をひそめながらもペラペラしゃべっちゃう。
  これほど探偵がやり易い島もにゃいにゃ。
  ちっとも閉鎖的じゃない(笑)。
  ちっちゃい頃からそれを観てきたからそれが当たり前だって思うようににゃってたにゃ。
  そうそう。長谷川版「獄門島」はそんな金田一シリーズの既成概念をぶち壊して新しい金田一像の創造に挑んだ意欲作だった。さっきもいったけどゴールデンタイムでの再放送が実現した辺り、結構好意的に受け取られたんじゃないかな。
  金田一が東京からの電報を受け取ったところで終わりだったにゃ。
  その文面が「悪魔ガ来タリテ笛ヲ吹ク」。金田一シリーズを知ってる者は次回予告とわかるけど知らない人はどう思ったんだろうね?
  作中人物にはにゃんの事だか絶対わからにゃいよにゃ。
  あれでわかったら推理を超えて超能力だよ。
 ウチが買ってきた本の中に「犬神家の一族」があったよね?
  唐突に戻したにゃ。
  実はその中にこんなものが挟まっていたんだ。

とじ込みチラシ表 とじ込みチラシ裏 しおり

  えっ!? これって公開当時のチラシとしおりかにゃ?
  奥付を見ると昭和51年(1976年)10月25日の発行ってなってるからそうみたい。

奥付

  ひょっとしてお宝?
  いや、どこかの誰かが「八つ墓村」の所に線を引いちゃったから価値はゼロだね。売っても二束三文だと思うよ。
  ……あ~あ。
  そんなにガッカリしないでよ。
  劇場リストを見ると今はもう無い劇場が多いにゃあ。新宿ビレッヂとか蒲田プラザ、日比谷映画劇場にゃんて聞いた事もにゃいにゃ。
  何いってんのよ、ミケ。日比谷映画劇場ならウチら行った事あるじゃない。
  え?
  覚えてない? 小っちゃい頃そこで「ガメラ 大怪獣空中決戦」と「ガメラ2 レギオン襲来」を一緒に観たじゃない。
  え、あれが日比谷映画劇場にゃの!?
 九 そうよ。チラシが古いから日比谷映画劇場がなくなったのも遠い昔みたいに思ってるみたいだけど、日比谷映画劇場が閉館したのは2005年なのよ。
  最近とはいえにゃいにゃ。
  それでもウチらと同時代といえる。今はシアタークリエになってるんだよ。
  へ~。
  紙と電子、どっちが優れているかって事じゃないんだけど、今回みたいなサプライズは電子書籍じゃ無理だね。
  そもそも電子書籍にチラシはにゃいもんにゃ。
  どんなに古くなっても変わらない。そこが電子書籍のメリットでもあるんだけど。
 古いといえば「獄門島」、執筆されたのが昭和22年(1947年)だからか、今では死語になった言葉が数多く使われている。
例えば床屋の清公を紹介する件で出てくる「スフの入った」。これ、混ざりものがある、純粋じゃないって意味だってわかる?
  全然わかんにゃい。そもそもスフって何にゃ?
  人造の絹糸の事で、ステープル・ファイバーを略してスフって呼んでたの。レーヨンって呼び名の方が一般的かな。「獄門島」での使い方を見ると他の繊維と混ぜて使われていたみたいだね。
  「ウルトラマン」のスフランとは何か関係あるのかにゃ?
  さぁ……、多分関係無いと思うよ。
 中でも一番厄介なのが「おんもらとした」。検索しても出てくるのは陰摩羅鬼や怪談ばかりでさっぱり意味がわからない。前後の文脈から判断すると「妖艶な」みたいな意味だろうとは思うんだけど……。
  陰摩羅鬼の陰摩羅じゃにゃいの?
  それがウィキペディアによると「仏教で悟りを妨げる魔物の摩羅(魔羅)に『陰』『鬼』の字をつけることで鬼・魔物の意味を強調したもの、もしくは障害を意味する『陰摩』と『羅刹鬼』」の混合されたものとの説がある」との事で、偶然読みが同じなだけで関係は無いみたい。
  え~。
  古典文学みたいに横溝正史シリーズにも注釈をつけなくちゃいけないかもね。お願いします、角川さん!
  わずか70年でもう古典だにゃんて……。
  考えてみれば横書きの表記も戦前と戦後で変わっちゃったし、明治の頃は今よりもかなの数が多かったって聞くな。日本語って変化の激しい言語かもしれない。
  ギャル語なんて今じゃ誰も知らにゃいもんにゃ。
  流行語は論外としてもら抜き言葉ややばいの使われ方等10年単位の間でも変わってきているもんね。
案外70年後の日本人が偶然ウチらのブログを見つけて読んでも全然理解できないかもしれないよ。



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笑撃! 「萌えペディア UMA図鑑」にパロディの群れを見た!!

 九条小夜子(以下九) 去年の秋だからだいぶ時間が経っちゃったけどホビージャパンから「萌えペディア UMA図鑑」という本が出た。
 これはイーグルパブリッシングが先鞭をつけた歴史上の人物や神話、伝説等を女体化イラストと共に解説するいわゆる萌え事典の一環で、珍しく自然科学をテーマにしてるの。
 豊橋ミケ(以下猫) UMAって自然科学にゃの?
  確かに疑似を付けた方がいいものが大半だけど……。
話を戻そう。女体化自体パロディの一環と考えられるけど、「UMA図鑑」は従来の萌え事典と比べてパロディ色が濃いの。
 ナビキャラ自体が「ポ○モン」のパロディ。

「萌えペディアUMA図鑑」キャラ紹介001

  ジャッキー君、そんにゃに可愛いかにゃ。
  その辺は個人の趣味という事で。
 解説役は3代目Dr.カワグチ。彼女はUMA名人の名を継ぐことを目指している。
  UMA名人って……。
  元ネタが何かはいうまでもないよね。
 さらにカワグチって名前は往年の名物番組のパロディでもあるんだ。
  名物番組?
  正直、読者の大半は知らないんじゃないかって思うんだけどね。それは「水曜スペシャル 川口浩探検隊シリーズ」
  あ、それにゃら知ってるにゃ! 嘉門達夫の歌にゃ。

  それしか知らないでしょ……。それにしてもよく訴えられなかったなぁ。
 昭和の頃にテレビ朝日で放送された2時間枠の特番で、川口浩隊長率いる探検隊がジャングル等の秘境に行ってUMAや巨大生物を探し求めるって内容なの。
 10年くらい前、藤岡弘、を隊長に復活したね。
 おそらく探検隊の川口の方が先にあって、後から「ガンダムビルドファイターズ」のパロディをつけ足したんだと思う。
 パロディはナビキャラだけにとどまらない。UMAには必ずこんなキャッチコピーがつけられている。

 衝撃! ヒマラヤの忌まわしき雪男は実在した!!
 UFOか!? 生物か!? 謎の飛行物体をメキシコの空に見た!!
 デリーの暴れ猿はハヌマーンの化身!? 大都会に猿人を追え!!
 察しがつくと思うけど、やっぱりこれも川口浩探検隊のパロディ。
 さらに各UMAにはレアリティ(知名度)、こうげき、ぼうぎょ、すばやさというパラメータがついている他、特性も記されている。たとえばチュパカブラの場合、

 吸血:敵の血を吸うことで回復する。敵にトドメを刺した場合、その敵の最大HPの5%、自身のHPが回復。
  HPって何にゃ!?
  解説文ではなくイラストの方に載っているところを見るとカードゲームのパロディだね。
 とまあパロディ満載の「UMA図鑑」、肝心の本文はというとラインナップにユニコーンやエルバッキーが入っているなど、残念ながら資料価値は低いといわざるをえない。
  まあこのシリーズでUMAや歴史の知識を身に付けようって人はいにゃいから気にすることにゃいにゃ。
  いいのか、それで?

まぜまぜモンスター
Dr.カワグチとUMAから生まれたモンスター
by ふりーむ!



テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

tag : UMA 川口浩 カワグチ パロディ 女体化

厄介な時期を扱うのだから注意に注意を重ねてほしい 「-激動の昭和史を読む- 太平洋戦争の記憶」

 九条小夜子(以下九) アシェット・コレクションズ・ジャパン「-激動の昭和史を読む- 太平洋戦争の記憶」ってパートワークの刊行を始めたんだけど、
 
 豊橋ミケ(以下猫) ちょっと待つにゃ。パートワークって何?
  09年に「ウルトラマンオフィシャルデータファイル」の話をした事があったじゃない? それと同じで一つのテーマで毎週、隔週で雑誌を出して、全部揃えればちょっとした事典や図鑑、模型が完成するってヤツよ。
  あれ、あの時はファイルマガジンっていってにゃかった?
  それでも間違いじゃないんだけど、試しにそれで検索してみたらオフィス用品のファイルばかりがヒットするからまずいって思ったんだよね。パートワークって言葉はまだなじみがないけど、出版社はその呼び方を採用しているし、そっちなら検索でもトップにくるからウチもそれでいこうと思うんだ。
  絶対続かないと思ったのに「ウルトラマンオフィシャルデータファイル」はコンプリートしたにゃあ。
  見直した?
  置き場所とるよにゃー。
  ……。
 場所をとるといえば「-激動の昭和史を読む- 太平洋戦争の記憶」は「ウルトラマン」以上だよ。全何巻かは見当もつかないけど、毎号当時の新聞の復刻版が付録についてくる。これが今の新聞と同じサイズなんだ。
 専用ファイルがあるんだけど、CMを見ると結構な大きさ。
  ん~、日本の一般的なご家庭にはきついサイズだにゃあ。
  まあサイズはさておき、太平洋戦争っていまだに自衛かどうかでもめてるでしょ。
 「閃光のナイトレイド」の満州事変直前の頃を扱った話は放送されず、本宮ひろしの「国が燃える」は日中戦争の日本兵の描写が物議をかもして打ち切られてしまった。
 「閃光のナイトレイド」は09年、「国が燃える」は11年頃の話で決して遠い昔の話じゃない。今だって従軍慰安婦問題でもめている。
 さすがに「太平洋戦争の記憶」で従軍慰安婦をとりあげることはないと思うけど、先にいった通りもめごとの種はある。思い切った企画だと思うんだ。
  にゃるほど。それで買ってみたんだ。
  それだけじゃないけどね。
 読んでみたんだけど、ウチの知る限りでは歴史的間違いはないみたい。
 でもね……。
  でも?
  このページを見てみてよ。

 太平洋戦争の記憶 真珠湾攻撃

  真珠湾攻撃の解説だにゃ。これがどうかしたかにゃ?
  まず地図。
 基地の位置がわかりにくいっ! 東端の黒い四角の左上にはフォード海軍航空基地、右下にはベローズ陸軍航空基地の名がある。どっちなの?
  オアフ島の地理にゃんて知らにゃいもんにゃあ。
  でしょ? 攻撃隊の進路を示す矢印と重ならないようにって配慮した結果なのはわかる。だったら黒い四角じゃなくて①、②みたいな数字にして、島の外に基地名を書いておけばいいじゃない! 真珠湾攻撃っていっても普通の人が知ってるのは真珠湾だけで、そこから離れた所の基地なんて知らないって!
 もう一点気になる所がある。
 ウチはレーダーについては電波の反射で敵や雲の位置を探るもの程度の知識しかない。だから専門家の目には何もおかしいことはないのかもしれない。
  前置きが長いにゃあ。
  米軍が日本海軍の戦闘機の接近を何故察知できなかったかを書いてるけど、上のイラストを見ると攻撃隊第一波はダイヤモンドヘッドの反対側を飛んで真珠湾に向かっている。これでどうやって「ダイヤモンドヘッドの山陰に消え」られるんだよ!
  ダイヤモンドヘッドの周りを飛んでるのは第二波の方だにゃあ。
  そっちの方を指してるんじゃないかって? でも「レーダーが捕えた」のは「淵田中佐の攻撃隊第一波」だとはっきり書いてある。これやダイヤモンドヘッドの山陰に消えたのが第二波の方だったら文章としておかしいし、何より第二波が来たのは日本時間午前4時32分と書いてある。どう読んでも山陰に消えたのは第一波なんだ。
  でもコースが合わにゃい。
 ダイヤモンドヘッドに反射した電波が邪魔で第一波を捕えられにゃかったんじゃにゃい?
  えー、それじゃ島の南西部はレーダーが使えない事になっちゃうよ。そんなレーダー役に立たないでしょ。
 ヒッカム海軍航空基地をまわりこんできた隊ならまだしも淵田中佐の名前を挙げている以上、一番外側を通った水平爆撃隊を指していると見るべきだもん。
 刊行の意欲は大いに買うよ。だからこそ細かい点まで注意して作ってほしい。ウチが指摘したのは重箱の隅つつきみたいなもんだったからいいけど、歴史的な間違いだったら厄介なことになるからね。


テーマ : 歴史・時代小説
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tag : 太平洋戦争の記憶 真珠湾 ダイヤモンドヘッド 淵田中佐

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